沖縄で願う「アイヌ」の未来 「差別、貧困の窮状知って」 ルーツを持つ親子の思い


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アイヌ民族のアイデンティティーを抱き、沖縄で暮らす玉城美優亀さん(右)と息子の寿明さん=6日、糸満市の美々ビーチ(喜瀬守昭撮影)

 日本の先住民族のアイヌ民族にルーツを持つことを誇りに抱く親子が沖縄にいる。父が北海道出身のアイヌ民族で20代の頃から沖縄に暮らす玉城美優亀(みゆき)さん(62)=釧路市出身、糸満市在=と、息子で那覇市出身の寿明(ひろあき)さん(35)=与那原町=だ。美優亀さんは、長年の同化政策により伝統的な生活や文化を失ったアイヌ民族の行く末を憂う。「アイヌの衰退は著しい。人種差別を受けて今も貧困にあえぐ窮状を多くの人に知ってほしい」と訴える。

 政府は明治以降、北海道に和人(大和民族)を入植させ、土地の官有化や狩猟・漁労を禁止してきた。アイヌ民族は伝統的な生活ができなくなって困窮した。貧困は再生産され、現代も続く。

 美優亀さんは幼少時からアイヌ民族に対する差別を見聞きしてきた。母と死別後、父は東京出身の和人と再婚したが、義理の親からは「アイヌと一緒になるな」などと猛反対を受けたという。

 自身は1982年に沖縄出身の男性との結婚を機に県内へ移住。沖縄ではアイヌ民族があまり知られていないこともあってか、差別的な言動を受けたことはない。

 美優亀さんは「今も出自を隠す親戚もいる。だけど、小さい頃から見てきたアイヌの歌や踊りなどの文化が好きで誇りを持っている。この素晴らしい文化を失いたくない」と語った。

 寿明さんは日本の周縁で生きるマイノリティーのアイヌ民族と沖縄の人々の交流促進を模索する。糸満市真栄平にある沖縄戦で亡くなったアイヌ民族を含む兵士や住民の遺骨が納められた「南北之塔」を通じた双方の絆を強める活動をする。

 寿明さんは「アイヌ民族とウチナーンチュの血が流れている。沖縄でアイヌ民族のために何かをやるのは自分に与えられた使命だと感じている」と話した。
 (梅田正覚)