サンゴ礁、潜らず調査 海水中のDNAを解析、種類など識別 OISTと東大などが新手法


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 沖縄科学技術大学院大(OIST)は、東京大、一般財団法人沖縄県環境科学センターの3者で共同研究・開発してきた「サンゴ環境DNA解析法」の有効性の確認に成功したことを発表した。新しい解析法は、サンゴが海水に放出した粘液などに含まれる極めて微量なDNA(環境DNA)を増幅・検知し、属で識別する。表面海水を採集するため、潜水調査の危険性も軽減できる。

 論文が3月29日発行の英国科学アカデミー紀要「Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences」に掲載された。新手法が確立されたことで、サンゴ礁を形成する造礁サンゴの網羅的、大規模調査が可能になるとしている。

 サンゴの調査は専門家が潜水して目視観察するのが一般的。ただ、属の分類に高度な知識を要求されること、潜水できる時間・深度が制限されること、小さい、または、隠れているサンゴを目視できないことなどの難しさがあった。

 OISTなどはこれまで恩納村などで予備実験を重ねていたが、2021年9月上旬~12月下旬、沖縄島62地点(水深1~10メートル)での潜水目視観察と環境DNA解析法を同時に行った。結果を比較したところ、観察と解析法の結果が41地点(67%)で完全に一致、15地点(24%)でほぼ一致し、新手法の有効性が確認された。併せて、これまで沖縄島で確認されていなかった属のDNAも検知された。

 OISTのマリンゲノミックスユニットの佐藤矩行(のりゆき)教授は、サンゴ保全のために正確な実態調査が不可欠であると強調。「新手法の確立で網羅的、大規模な調査の道が開けた」と意義を強調した。

(安里周悟)