琉舞通し平和の祈り 東京・神田明神に舞踊奉納 琉球芸能団


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神田明神本殿内の拝殿で琉球舞踊「かぎやで風」を奉納する琉球芸能奉納団の団員=8日、東京都千代田区

 琉球芸能奉納団(伊禮末子主宰)が8日、東京・神田明神で琉球舞踊を奉納した。琉球芸能奉納団は、2009年に北海道の上川神社を皮切りに、伊勢神宮や出雲大社などで舞踊を奉納しており、神田明神が14カ所目、15回目の奉納演舞となった。

 重要無形文化財「琉球舞踊」保持者の玉城節子さんを団長に、流会派を越えて53人の実演家らが参加し、舞踊9題を奉納した。

 伊禮主宰は07年、腎臓がんで余命3カ月を宣告され、県内では手術ができなかったため、北海道の病院に入院した。同年、死が迫る恐怖から逃れようと病院の近くにあった上川神社に手を合わせた。手術は無事成功。伊禮主宰は感謝と、自身が受けた果報が多くの人に行きわたることを願い、09年に有志で上川神社へ琉球舞踊を奉納した。以後、世の安寧(あんねい)を願い、琉舞の魅力を伝えたいという思いを共にする舞踊家が、流会派を越えて集い、各地を回った。

 神田明神本殿内の拝殿で行った奉納演舞は、奉納団の団歌の後、祝儀舞踊「かぎやで風」で幕を開けた。豊かな実りへの喜びを表現した「稲まづん」や厄払いの「獅子舞」が踊られ、最後は玉城団長が「作田」で幻想的に踊り収めた。

 神田明神の清水祥彦宮司は「困難な日々を乗り越え、琉球の素晴らしい文化に誇りを持ち継承していることへ敬服し、(奉納に)感謝したい」と述べた。

 玉城団長は「厳粛な空間で、空気も澄み切っており浄化された心持ちだ。琉球芸能を通し、平和への祈りが伝わればと思う」と話した。

 奉納演舞を観賞した「琉球舞踊立方」人間国宝の志田房子さんは「心のこもった舞台に感動した。舞踊家の一人としてこのような活動をする仲間を誇りに思う。皆さんの真心が伝わり、戦争のない世界になってほしい」と語った。

 奉納団には「甦(よみがえ)る首里城を守る会」の久保田照子会長も参加した。演舞は同日、東京・九段北の靖国神社にある能楽堂でも行われた。

(藤村謙吾)