戦の記憶、魂を込め伝える 本村ツルさんを悼む 普天間朝佳・ひめゆり平和祈念資料館館長


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戦争体験を語る元ひめゆり学徒の本村ツルさん=2018年3月、那覇市安里のひめゆり同窓会館

 本村ツル先生がお亡くなりになられたと聞き、私たちも大変なショックを受けている。生き残った学徒のリーダー的存在で、ひめゆり平和祈念資料館の建設や運営に尽力されていた。沖縄戦やひめゆり学徒の記憶を後世に継承する上で、多大な功績を残した一人だ。

 本村先生は戦時中は本部壕に勤務し、砲爆撃が飛び交う中、引率教師と共に各壕に出向いて連絡役や学友たちの状況の把握に努めていた。時には学友をみとることもあったと聞く。1945年6月18日に解散命令が下った後に、重症を負った後輩を置き去りにしてしまったことを終生悔やんでいた。

 「当時のことを思うと胸が苦しくなる。どんなことを言っても言い訳になるので、戦争体験を話したくない」とおっしゃっていたのを覚えている。ひめゆり館長や県女師・一高女ひめゆり平和祈念財団の理事長といった要職を歴任していたが、戦争体験の講話はそう多くはなかった。それは心の奥にそうした思いがあったからではないか。

 一方で、戦争の記憶の継承では精力的に取り組み、自身が館長だった2004年には資料館をリニューアルして展示方法を改め、記憶の担い手として若い職員を採用するなどした。次の世代にどうしたら伝わるかを先頭に立って取り組んでいたのは本村先生であることは間違いないだろう。

 かけがえのない人が亡くなるのは悲しいし寂しいが、彼女たちが戦の記憶を魂を込めて後世に伝えた姿を目にしてきた。現在、平和を脅かす動きが沖縄の周辺で起きている。悲しがるのではなく奮い立って本村先生の思いを受け継ぎ、活動を着実に継承していきたい。

(ひめゆり平和祈念資料館長、談)