<ひと>県立博物館・美術館を「沖縄を再認識する場に」 第5代館長に就いた里井洋一さん


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県立博物館・美術館館長に就任した里井洋一さん=4日、那覇市の同館

 朗らかな語り口の中に研究、教育に対する情熱がのぞく。4月から県立博物館・美術館の第5代館長に就任した。琉球大などで歴史教育・社会科教育の研究と実践に取り組んだ経験を踏まえ、同館を「多くの人が集まり協働できる場にしたい」と語る。

 大阪府出身。進路を考える高校生の頃は沖縄の日本復帰前後だった。「独自の歴史を持ち、理不尽な世界の中で抵抗している沖縄」に引かれ、琉球大の史学科に入った。

 1978年に大学を卒業し、中学の教員に。87年から2年間、西表島の船浦中で勤めた経験が転機になった。「生徒一人一人が大切にされ、地域の人々の生活そのものが学びになる。僕の教育の原点になった」。郷土史家の石垣金星さんと共に古文書を読み、地域を歩く中で王国時代の造船所跡を発見。研究面でも大きな一歩になった。

 89年に琉球大の助手になり、講師、助教授を経て教授に就任。社会科教育では、生徒みんなで仮説を立て、検証する授業をつくり、それを実践できる学生・教員を育てた。「協働を学ぶことで平和がつくられる」と強調する。

 博物館・美術館について「ものと対話しながら沖縄を再認識したり、芸術に触れて心で感じたりする場になれば」と話す。「多くの人が訪れるよう、館が工夫してきたことに、僕がやってきたことを絡ませて豊かにしたい」

 趣味は歩くこと。古地図などの資料を調べた上で歩き、発見があると文献で調べる。「まるで研究だよね」と笑う。67歳。南風原町在住。
 (伊佐尚記)