“天下国家”と苦笑い 名嘉一心(中部報道グループ)<ゆんたくあっちゃ~>


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written by 名嘉一心(中部報道グループ)

 学生時代はよく、研究室で夜な夜な「沖縄にだけ米軍基地が集中するのはおかしい」「いやいや、日本の防衛には必要でしょ」などと“天下国家”を論じたものだ。

 社会人になってからは、そのような機会も減ったが、月に1、2度の同僚との飲み会では、仕事柄もあって熱い熱い意見交換会が催される。ある日の仕事終わりも沖縄市中央にある居酒屋でいつものように意見交換を繰り広げていた。ネタが尽きてきて、帰ろうかと席を立った頃、「皆さんも街のことを思っていらっしゃるんですね」と、見知らぬ人が笑顔で声をかけてきた。どうやら隣の席で話に聞き耳を立てていたようだった。珍しい出会いに興奮し、何の躊躇(ちゅうちょ)もなく名刺を渡すと「あちゃー」。相手は某自治体の職員だったらしく、苦笑いをしていた。

 米軍普天間飛行場の返還に日米が合意して、12日で27年となった。県は辺野古への移設に反対する。宜野湾市は移設やむなしと正反対の立場だ。沖縄戦の経験から、軍事拠点となる基地そのものに反対する意見も多いだろう。街の「ど真ん中」に飛行場があることで、騒音や落下物に不安を募らせる人がいることも確かだ。記者は基本的に取材先と“天下国家”を論ずることはない。ただ本音を聞く努力を惜しまず、忖度(そんたく)のないリアルを報じたい。

(宜野湾、中城)


ゆんたくあっちゃー 県内各地を駆け回る地方記者。取材を通して日々感じることや裏話などを紹介する。