負傷したヤンバルクイナにリハビリ施設 森を再現し野生復帰を支援 CFで全国から1356万円寄付 沖縄・国頭


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開所式に出席した(左から)どうぶつたちの病院沖縄の長嶺隆理事長、知花靖国頭村長、地域活性サポートセンターの比嘉明男理事長、上地哲安田区長=4日、国頭村安田のヤンバルクイナ・リハビリセンター

 【国頭】交通事故などさまざまな原因でけがをして保護されたヤンバルクイナの野生復帰に必要なリハビリを行う「ヤンバルクイナ・リハビリセンター」の開所式が4日、国頭村安田くいなふれあい公園敷地内の同センターで行われた。

 これまでは、ヤンバルクイナが負傷した場合、環境省施設を間借りしてリハビリを続けていた。長年にわたりリハビリ施設の必要性を訴えていた、どうぶつたちの病院沖縄の長嶺隆理事長とやんばる・地域活性サポートセンターの比嘉明男理事長が協力し、クラウドファンディングを活用して建設資金を募り、全国の1007人から1356万円の寄付が集まった。

リハビリセンターに放鳥されたヤンバルクイナ

 施設面積は48.76平方メートル。資材の高騰などの理由により施工主の昭建設(村奥間)と調整して設計を見直し、当初の予定面積や部屋数を縮小した。今後、施設の利用や資金調達状況などを見極め、増築できるような処置を施して無事完成した。

 施設は16.2平方メートル1部屋、8.1平方メートル2部屋の計3部屋があり、1羽ずつ収容する。クイナが過ごす部屋には落ち葉を敷き、オオタニワタリ、クワズイモ、タマシダなどの植物を植えた。水遊びができる池も備え、やんばるの森に近い環境を再現している。

 夜間は木の上で過ごすクイナの習性を考慮し、木登り練習用のパイプに麻袋を巻き付け、クイナが登ったり降りたりする際に滑りにくいようした。

 開所式までに、多くの一般のボランティアが施設周辺の芝張りなどの作業を手伝った。地元の安田小学校児童らは、クイナの部屋に植えるタマシダを採取するなど、それぞれ作業を通じて施設への思いを伝えた。

 数カ月間は、健常な個体を試験的に放鳥し、施設内の環境が良好かなどを観察する予定。この日、環境省の施設で保護していた7歳の雌1羽が放鳥された。放鳥された個体は静かに部屋の中を歩き回って餌を探すしぐさを見せたり、木登りをしたりして、見守った関係者らを安心させた。

 地域活性サポートセンターの比嘉理事長は「多くの善意に感謝する」とあいさつした。どうぶつたちの病院沖縄の長嶺理事長は「この施設を生かしていきたい。最後の目標はこの施設がいらなくなること。そういう夢を見て頑張りたい」と話した。

 野生生物の交通事故被害は後を絶たず、今年に入ってヤンバルクイナ3件、ケナガネズミ9件の事故があった。関係者は「制限速度を守り、安全運転でやんばる路を走ってほしい。傷ついた希少動物を見かけた場合は、すぐに連絡すれば早期治療により助かる命もある」と呼び掛けている。

 傷ついた希少動物を見かけた場合の連絡先は環境省やんばる自然保護管事務所、電話0980(50)1025。NPO法人どうぶつたちの病院沖縄、電話090(6857)8917。
 (新城高仁通信員)