「児相は『最後のとりで』矜持もって」 有志の会、検証求め行動 沖縄 <里親解除 調査報告書を読み解く> 番外編


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里親委託解除事案の原因究明を玉城デニー知事(右)に求める、県里親有志の会の儀保由美子さん(中央)=2022年6月9日、那覇市の県庁

 児童相談所の元職員として、里親として、心が揺れた。那覇市の50代の夫妻が、生後2カ月から5年以上養育した児童の里親委託を児童相談所から解除された問題で、検証の必要性を県に求めるなどした「県里親有志の会」。メンバーの儀保由美子さん(70)=大宜味村=は、これまで5人の里子を預かった里親経験者で、児相の元職員でもある。「児相は子どもを守る最後のとりでだし、そうであってほしい。矜持(きょうじ)を示し、二度と同じことを繰り返さないでほしい」と願った。

 行動を起こしたきっかけは、児相が2022年1月5日付で里親委託を解除する前に、有識者でつくる審議会に諮っていないと知ってからだ。本紙は22年2月10日に審議会を開かずに委託解除したことを報道。その際、県青少年・子ども家庭課は審議会に事前に諮らなかったと認めた上で「事後に経緯を報告した」などと語っていた。

 児童福祉法の施行令では、児相の方針と児童や保護者の意向と一致しない場合、「児童福祉審議会の意見を聴かなければならない」と規定する一方「審議会の意見を聴くいとまがない時」は、事後報告を認めている。沖縄では県社会福祉審議会の児童福祉専門分科会・審査部会が審議を担う。

 儀保さんは「私が児相にいた時は、保護者らと考えが合わない場合は必ず審議会にかけていた」と振り返る。さらに、児相が元里親に「児童を引き渡さなければ誘拐罪になりうる」などとする確認書に同意を迫ったことも判明。「こんなやり方はなかった。児相内部で何が起きているんだろう」と感じた。

 県側は、元里親が21年12月28日に委託解除の差し止めを求めて提訴するまでは対立案件ではないと考えていたと説明していたが、外部有識者による調査委員会がまとめた報告書は「経過記録をたどると、対立案件だと児相が認識していた」と指摘。県の対応を「審査部会を軽視していた」と批判した。儀保さんは「児相や県が報告書をどう受け止めているかを知りたい。指摘を今後どう生かすかが再発防止になる」と力説した。

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 本紙には県内の里親・元里子から、多くの意見が寄せられた。60代の里親女性は「勇気を持って声を上げた元里親夫妻に感謝している。児相の問題が世に明らかになった」と話す。里親家庭で育った20代女性は、児相が実親と元里親に事実を歪曲(わいきょく)的に伝達して対立させたとの報告書の記載に触れ「子どもからすると、実親と里親が対立したら困る。児相は何がしたかったのか」と困惑の表情を見せた。

 読者らからもさまざまな反響を受けた。西原町の重森道子さんは「児相は子ども第一で考えて結論を出しているのだろうか。あまりにも理解し難い対応だ。一県民として、この問題を注視していきたい」とつづった。
 (おわり)

 (この連載は前森智香子と稲福政俊が担当しました)