【識者談話】前泊博盛氏(沖縄国際大教授)有事つながりかねない


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前泊博盛氏

 破壊措置準備命令が出たことは、有事や紛争につながりかねない危険な動きで、重大な外交問題だ。緊急事態でもないのに国会で正式な議論がないまま命令を出した。岸田政権は、敵基地攻撃能力の保有など憲法を超えるような問題すら閣議で決めている。北朝鮮を巡る状況はどう変わったのか。大きく変わっていないのなら、なぜ、誰が何に基づき、どのレベルで判断して決定したのか―などをしっかりと押さえる必要がある。

 戦争になれば軍隊のある場所が標的になるというのが沖縄戦の教訓だ。自衛隊を先島に配備して標的化し、その標的を守るために迎撃用ミサイルを置く。本末転倒だ。

 一度に複数のミサイルが飛んでくれば、全て打ち落として住民を守ることは不可能だ。PAC3は、国民や住民を守るためではなく、基地を守るための装備に過ぎないのではないか。

 本来ならば、軍事的に動く前に外交を通じて北朝鮮に意図をただす必要がある。PAC3配備を決める前に、攻撃を阻止する外交対応が不可欠だ。その点を国会でもっと追及し議論すべきだ。

 安保関連3文書による43兆円もの軍拡を許し、軍事大国化を進める流れに、いかに歯止めをかけるか。戦争、紛争を回避する外交力をいかに強化できるか。この国の安全保障問題は、まさにいま正念場を迎えている。 (安全保障論)