「同じ悲しみ防ぎたい」 池袋事故から4年、沖縄出身の妻子亡くした遺族の祈り 東京


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妻と長女の思い出をアルバムでたどる松永拓也さん=22日午後、都内

 東京・池袋の乗用車暴走事故は発生から4年が経過した。事故で沖縄県出身の妻と長女を亡くした松永拓也さん(36)が22日、取材に応じ「互いの命や生活を思いやる社会になってほしい」と訴えた。高齢ドライバー問題や交通事故被害者支援を巡る講演を続けており「2人の命を無駄にせず、同じような悲しい事故を防ぎたい。それが僕の生きる意味にもなっている」と話す。

 2019年4月19日、旧通産省工業技術院の元院長飯塚幸三受刑者(91)の車が暴走。妻真菜さん=当時(31)、長女莉子ちゃん=同(3)=を亡くし、幸福で満たされた生活は突然、暗転した。あれから4年。松永さんは現在の心境を「悲しみが深くなった。この手で抱きしめられないことが最も苦しい」と語る。

 飯塚受刑者は実刑判決が確定。松永さんは20年10月、飯塚受刑者に損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。「ブレーキとアクセルを踏み間違えた原因は何か」。刑事裁判では明らかにならなかった点を民事裁判で検証し「再発防止に役立てたい」と考えている。

 ただ高齢ドライバーの問題を「世代間の争い」にしたくないとの思いも強い。期待するのは、自治体による運転の代替手段の拡充だ。「移動販売や速度が出ないコンパクトカーへの補助制度が整備されれば、免許返納への抵抗感が変わるのではないか」と提案する。

 松永さんは事故後、交流サイト(SNS)での誹謗(ひぼう)中傷に悩まされた。1月には松永さんをツイッターで中傷したなどとして侮辱罪などに問われた男に東京地裁が有罪判決を言い渡した。「いい前例ができた。厳罰化は抑止力になる。中長期的にはリテラシー教育が大事だ」と指摘する。

 「真菜と莉子に『お父さんがんばったよ』と言えるように」。悲しみを力に変えようと、松永さんはこれからも活動を続ける。

(共同通信)


用語 東京・池袋の暴走事故

 2019年4月19日、東京都豊島区東池袋4丁目で、旧通産省工業技術院元院長の飯塚幸三受刑者(91)の車が暴走し、横断歩道を自転車で渡っていた松永真菜さん=当時(31)、長女莉子ちゃん=当時(3)=が死亡、9人が重軽傷を負った。飯塚受刑者はアクセルとブレーキを踏み間違えたとして、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われ、禁錮5年の実刑が確定した。