翻弄される展開先住民 必要ない、異論余地なし、戸惑っている、PAC3配備


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地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の発射機が運びこまれた陸上自衛隊与那国駐屯地=24日、与那国町

 北朝鮮の軍事偵察衛星発射計画を受け、防衛省が地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の配備について、常駐する沖縄本島に加え宮古島、石垣島、与那国島への展開に向けた作業を進めている。国は衛星打ち上げを事実上の長距離弾道ミサイル発射とみて「破壊措置準備命令」を発出しており、自衛隊員や機材を載せた船や航空機が次々と沖縄へ進路を向けている。配備される島に住む市民からは暮らしへの影響を懸念する声も上がる。

 与那国 高まる緊張

 台湾に近い「国境の島」与那国町。初となるPAC3の配備とあって、島は次第に緊張感が高まっている。

 「(配備は)必要ない」。西自治公民館の崎原正吉館長(75)は強い語気で言い切る。「民主主義の世の中のはずだが、住民説明もない」と住民を軽視する国の姿勢に怒りが収まらない。軍拡を進める北朝鮮や台湾有事への懸念など、国際情勢に翻弄(ほんろう)される島の状況に「これ以上軍備拡張はしないでほしい」と要望した。

 一方、与那国町漁協の嵩西茂則組合長(60)は「緊急避難的なもの。やむを得ない」と配備に理解を示す。「国の方針で決められたもので、異論を挟む余地はない。もしもの時のために体制を整えておかないといけない」と語った。

 過去に3度配備されている宮古島市の60代女性は「命を守ることは大切だが、北朝鮮の挑発に乗っかることも嫌だ」と述べ、南西諸島への軍備増強に戸惑いを見せる。陸上自衛隊のヘリコプター事故にも触れ「隊員の早期の発見を祈っているが、自衛隊関連のことが(市内で)相次ぎ、戸惑っている」と複雑な胸の内を吐露した。

 石垣市の農家・上原正光さん(70)は「戦争の準備そのものだ。石垣が標的の島になる」と憤る。「軍事に島が利用され、ワジワジーする」と声を荒らげた。

 うるま市の陸上自衛隊勝連分屯地への地対艦ミサイル配備計画に反対する市民団体「ミサイル配備から命を守るうるま市民の会」。照屋寛之共同代表は「抑止力強化で対抗すれば本当に有事になりかねない」と指摘し、紛争回避へ外交交渉に努める必要性を強調した。
 (小波津智也まとめ)