第三者承継が生み出す新たな展開 マッチングサイトで廃業を回避 地方都市のにぎわい創出に


社会
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カフェ「みなづき」オーナーの石崎友貴さん。商店街にあった創業66年の書店を受け継いだ=22日、宮崎県高原町

 企業の経営者が高齢化し廃業が増える中で、親族以外の第三者に事業を継いでもらいたい人と、継ぎたい人をつなぐマッチングサイトの利用が広がっている。地方で長年続いた書店をカフェに、コイ料理店はメダカ店に…。受け継ぐ側が事業内容を変えることで、地方都市の新たなにぎわい創出につながっている例もあるようだ。

 音楽が流れ、コーヒーの香りが漂う宮崎県高原町のカフェ「みなづき」。ノートなど文具も販売し、子どもたちが無料で勉強できるスペースも用意した。客は県内外から足を運ぶ。

 オーナーで同町出身の石崎友貴さん(40)は、隣接する都城市で障害者支援施設を経営しているが「人を呼び込み、活気を取り戻したい」と、商店街にあった創業66年の書店を受け継いだ。

 書店を営んでいた尾上政利さん(76)は、商店街が徐々に閑散としてきた中で、いよいよシャッターを下ろすことが「心苦しかった」と打ち明ける。子どもは町を離れており、自身の年齢も考えて事業承継を選んだ。「田舎で本や文具はやっていけない。違う形でいいとお願いした」

 石崎さんと尾上さんを結んだのが、事業承継サイト「リレイ」だ。サイトでは、事業内容の他に、経営者の人柄やどのような形で継いでほしいかなどを写真を添えて紹介。運営会社ライトライト(宮崎市)がマッチングをサポートし、成立すれば売り手側は同社に仲介の報酬を支払う。同社の斉藤隆太代表(38)は「多くはそのまま事業を継ぐが、今回は文具を販売するカフェという、思い浮かばなかった形になった」と話す。

 ネット公募にしたことで、第三者による承継は増えつつある。2020年1月の同社設立から、今年4月中旬までに45都道府県で成約。受け継ぐ側は30~40代が多いという。

 「一からお店を出すより資金面で助かった。自分の店を持つ夢がかなった」。そう話すのは、鹿児島県大崎町で養魚場併設のコイ料理店から承継した純浦幸平さん(44)だ。昨年11月にメダカや金魚を養殖販売する「高井田めだか」をオープン。養魚場に使われた池で金魚や水草を育てる。

 東京商工リサーチによると、休廃業・解散の企業件数は増加傾向だ。昨年は約4万9千件で、13年の約1・4倍に。同社の勢越淳一さんは「経営が厳しくなりつつあった企業に新型コロナウイルスが追い打ちをかけた」と話す。

 斉藤さんによると、事業承継は売り手側がもとの事業形態にこだわると、継ぐ側が見つかりにくいという。「廃業が進むと、人が住めない地域になってしまう。事業のコアな機能を残し、その地域に求められている事業に転換できれば、集客も期待できる」と話した。

(共同通信)