【深掘り】PAC3の先島展開、長期化する可能性 見通せない打ち上げ時期 北朝鮮への警戒5カ月続くことも


この記事を書いた人 琉球新報社
C2輸送機で運ばれてきたPAC3の発射機=27日午前8時40分ごろ、新石垣空港

 北朝鮮による「軍事偵察衛星」の打ち上げに備え、防衛相が地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の先島への展開を指示し、1週間余りが経過した。港湾の使用が計画通りにできないなど輸送には混乱もみられたが、自衛隊側は輸送機を多用するなどして展開を急ぐ。だが、北朝鮮は1日時点でも国際機関へ打ち上げ計画を通知しておらず発射時期は見通せない。展開は長期化する可能性がある。

 韓国の公共放送KBSは4月19日付の電子版で、専門家の見方として北朝鮮が「衛星」を発射する時期を(1)米韓首脳会談が行われる4月26日の週(2)発射体の準備に時間がかかるため5~9月―の二つを挙げた。

 このうち、4月は終わったため(1)はなくなった。そのため(2)となり、今後5カ月間、発射への警戒が必要となる。PAC3の先島展開も長期化する見通しだ。

 KBSによると、北朝鮮はこれまでも衛星の発射時には国際海事機関(IMO)や国際電気通信連合(ITU)、国際民間航空機関(ICAO)などの国際機関に事前通知をしてきた。KBSは北朝鮮が「正当な衛星打ち上げという点を強調するため」として、これまでと同様に国際機関に衛星打ち上げ計画を通知し、「国際規範を順守する姿勢を示す可能性が高い」と伝えた。

 日本の防衛省内で4月中に打ち上げがある可能性が意識され、4月23日から展開準備を急いだ。だが、北朝鮮から発射時期や方角の予告がないことを踏まえ、防衛省は連日、情報を収集して北朝鮮の動向を見極めようとしている。

 PAC3展開が長期化する可能性について、自衛隊関係者は「終わりが分からない中で緊張を強いられる任務が長引けば、隊員にとって負担が大きい」と語る。また、ただでさえPAC3搬入を巡って摩擦が生じたことを踏まえ「県民の反感を招くのではないか」と懸念を口にした。別の防衛省関係者は、訓練とは違い、実際の危機に備えた展開のため「抗議の動きが広がらないのではないか」と話した。

 一方、玉城デニー県政を支える与党県議の一人は「もともとPAC3の常駐配備に向けた地ならしではないかと懸念されていた。展開が長期化すれば、国の姿勢に対する疑念はさらに大きくなる」と警戒感を示した。
 (知念征尚、明真南斗、與那原采恵)