性感染症ってなんだろう? 性行為の回数、年齢 無関係 <じぶんごとで考えよう HIV/エイズ>1


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 性感染症について、家族や友達、パートナーと話せていますか?

 性感染症(Sexually Transmitted Infections、略称・STI)とは、一般的にはセックスやオーラルセックスなどの性行為によっておこる感染症を指します。多くの方が口にすることは恥ずかしい、もしくは「自分には関係ない」と感じているのではないでしょうか。

 しかし、性感染症は性行為の回数や年齢に関係なく感染する可能性があります。一度の性行為でも感染することがあるのです。また症状の表れ方はさまざまです。性器や口腔(こうこう)の痛み、排尿時の痛みやかゆみのほか、陰茎や膣から分泌物が生じる場合もあれば、全く症状が出ないこともあります。そのため感染していることに気づかず相手にうつしてしまうこともあります。現在、県内でも幅広い世代で感染が広がっています。

 性感染症にはさまざまな種類があります。「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」の中で規定されている性感染症には9種類があります。

 中でも沖縄はHIV感染症の感染者数が人口10万人当たりで常に全国上位に位置しています。感染経路は母子感染、血液を介した感染、性行為によるものとされ、現在、性行為による感染が最も多いとされています。また、いずれかのSTIに感染しているとHIVに感染しやすくなります。特に、梅毒や性器クラミジア感染症、B型肝炎はHIVとの重複感染が多いとされています。県内で2021年に確認された梅毒は97件(暫定値)に上り、1999年の統計開始以降、過去最多の報告者数となっています。

 性感染症は長年「不特定多数と性行為をした人の病気」と言われてきました。感染経路、予防、治療法が確立した現在でも偏見や差別は根強く、当事者を苦しめています。今はメディアやSNSなどを通じて多くの情報が得られますが、中には性感染症や感染者について誤った情報もあり「性的少数者の人の病気だ」といった新たな誤解や偏見も生まれています。

 感染を防ぎ、偏見や誤解を生まないためには、家庭のほか教育や医療機関、行政などの連携が必要です。そして予防法や感染した場合の相談、受診先など具体的な内容をともに学び、正しい知識を身につけて一人一人が「自分の問題」と捉えることが大切です。 

 今、そして未来の自分と大切な人を守るためにも自分の身体に関心を持ち、周りの人と性感染症について話すことから始めてみませんか。

(新里尚美、琉球大学病院第一内科・県感染症診療ネットワークコーディネーター)