機体の破損状況、専門家により別れる見解 フライトレコーダーの解析が鍵に 陸自ヘリ引き揚げ


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航空評論家・青木謙知氏

 宮古島付近の陸上自衛隊ヘリコプター事故で、民間作業船が2日、機体の主要部分を引き揚げた。航空機に詳しい専門家の見解は「海面に激突したのか」「思ったよりも原形をとどめていた」と分かれる。機体とともに発見されたフライトレコーダー(飛行記録装置)の解析が原因究明の鍵になりそうだ。

 ヘリは4月6日午後3時56分ごろ、宮古島北西の海域でレーダーから機影が消えた。近くの空港との間で約2分前に交信した際は、通常の内容だった。

 元陸将でヘリパイロットを経験した山口昇・国際大教授は「異常を知らせる間もなかったのだろう」と当時の状況を推し量る。引き揚げられた機体は大きく破損。「海面に激突したのか、空中で爆発するような形でバラバラになったのか。相当な力が加わったのではないか」とみる。

 航空評論家青木謙知さんは、破損の程度は引き揚げる前の想定より軽いとの見方を示す。作業船の甲板に引き揚げられた部品の中に明るい黄緑色が見えており、機体の骨組みに当たるという。「海面に接触した衝撃で壊れたものの、基本構造は残っており、高度や速度は、それほどではなかったと推測できる」

 ヘリには機体の左右に燃料タンクが取り付けられている。これまでの捜索で、タンクとみられる物体1個が見つかる一方、2日に引き揚げられた中にもタンクのような物体があった。青木さんは「タンクは衝撃で外れやすい。機体に片方が残っていたとなれば、左右どちらかに傾いた状態で、海に入った可能性がある」と解説する。

 陸自は今後フライトレコーダーの解析を進める。装置には通常、エンジンの回転数や速度、高度などのデータが残される。山口さんは「どういうルートを経て、海底で見つかったのか分かるだろう」と指摘。青木さんは「海水に長時間漬かっており、データが読み出せるかが課題だ」と話した。