沖縄の現状、そして展望は 宮良麻奈美氏(石垣市住民投票を求める会) 小松寛氏(成蹊大学CAPS主任研究員)<「台湾有事」回避目指すシンポ>3沖縄から報告


社会
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 「台湾有事」の回避を目指すシンポジウム(「台湾有事」を起こさせない・沖縄対話プロジェクト主催、琉球新報社共催)が4月29日、琉球新報ホールで開催された。沖縄と台湾双方からジャーナリストや研究者、市民ら5人が登壇し、台湾や中国、双方の関係や沖縄の現状を報告。日米が果たしてきた役割や今後の展望を浮き彫りにした上で、東アジア地域での紛争を回避するために沖縄と台湾地域の連携を強める重要性を確認した。シンポジウムの様子を報告する。(沖田有吾、知念征尚、佐野真慈、梅田正覚、與那原采恵)


陸自配備 一貫性ない 宮良麻奈美氏(石垣市住民投票を求める会)
 

宮良麻奈美氏(石垣市住民投票を求める会)

 私が住んでいる石垣島には今年3月に陸上自衛隊の駐屯地が開設された。これは自衛隊の南西シフトの一環で中国に対する抑止力になるとされているが、石垣島では島が攻撃の対象になるのではないかと心配する声も少なくない。私自身、南西諸島での新たな防衛体制の構築が一体何のために行われているのか正確に把握できていない。2015年に駐屯地の建設計画が発表された当初、この配備計画が「台湾有事」に関わるものだとは知らされていなかった。

 私は18年から石垣島への陸上自衛隊駐屯地建設についての住民投票実施を求める市民運動を行ってきたが、政府は国防のためだと建設を進めていった。何が目的で誰のための配備なのかというところに一貫性を感じられない。

 メディアも政府寄りの報道が多く、地元の実態や人々の本音が伝えられていない。配備の目的は後付けなのではないかと思わざるを得ない言動が保守系の政治家や軍事化を推進する団体に目立つようになってきている。

 メディアの偏った報道や特定の思想を持った人たちのエスカレートした行為が日本や台湾、沖縄周辺でのトラブルの発生元になり、思いがけない有事が起きてしまうのではないかと、とても不安に感じている。


軍縮の国際世論形成を 小松寛氏(成蹊大学CAPS主任研究員)
 

小松寛氏(成蹊大学CAPS主任研究員)

 沖縄県は4月1日、地域外交室を設置した。玉城デニー知事は、県が有するソフトパワーを生かし、ネットワークを最大限活用し地域における平和構築をする、独自の地域外交を展開するとしている。沖縄県が目指すべきは、東アジアの平和と安定を維持するために軍事的な緊張を緩和させ、軍拡競争ではなく、軍備管理、軍縮こそが重要だとする国際世論の形成を目指すべきだ。この地域で軍事力を使うことは恥ずかしいことだというような認識に持っていけるかが目標かと思う。

 「軍隊は住民を守らない、守れない、そもそも守るための組織ではない」という教訓に基づき、軍事力によらない東アジアの国際関係秩序の発展のため、中央政府のみならず、地方政府とNGOなどを巻き込んだ国際世論の形成を目指すべきだ。潜在的戦場である台湾と沖縄が、当事者同士として軍事力の行使や軍拡競争を回避する内容の共同声明を出すというアイディアもある。

 対話することは決して弱腰ではない。武力を用いることは勇ましさではなく、弱さの表れだという意識を広く共有することで、好戦的な姿勢が選挙で票にならないという世論形成が必要だ。