中国と台湾、市民交流で相互理解を 張鈞凱氏(香港01駐台首席記者)<「台湾有事」回避目指すシンポ>1基調講演


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 「台湾有事」の回避を目指すシンポジウム(「台湾有事」を起こさせない・沖縄対話プロジェクト主催、琉球新報社共催)が4月29日、琉球新報ホールで開催された。沖縄と台湾双方からジャーナリストや研究者、市民ら5人が登壇し、台湾や中国、双方の関係や沖縄の現状を報告。日米が果たしてきた役割や今後の展望を浮き彫りにした上で、東アジア地域での紛争を回避するために沖縄と台湾地域の連携を強める重要性を確認した。シンポジウムの様子を報告する。(沖田有吾、知念征尚、佐野真慈、梅田正覚、與那原采恵)


 

張鈞凱氏(香港01駐台首席記者)

 日本の安倍晋三元首相が「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事」と発言して以降、「台湾有事」という言葉は台湾でも注目を集めるようになった。

 米シンクタンクCSISが1月に出したレポートは、2026年に中国が台湾に侵攻した場合、極めて惨烈な戦争を予想した。米台が辛勝できる前提の一つとして日本の参戦が含まれていた。

 これは米国のエリート層の思考を体現したもので、西側の(勝つか負けるかの)ゼロサムゲームの思考パターンが見て取れる。中国の勃興に対して怒りと焦り、恐怖を感じる一因となっている。

 中国共産党は国家統一に向けた強い決意と意思を示している。「武力の使用を放棄するとは約束しない」と表明すると同時に「最大の誠意と努力をもって平和統一を勝ち取る」と強調している。

 前段部分が過度に強調されるが、後ろの一文こそが台湾同胞に向けたものではないか。

 国共内戦の結果、49年に両岸は分裂状態となったが、中国の主権は分裂しておらず、二つの政府が大陸地区と台湾地区でそれぞれ統治権を行使することになった。この現実があるからこそ「92年コンセンサス」が生まれた。双方が「一つの中国」を認知している前提の下、両岸事務は内部事務であり、国際事務ではないと説明された。

 台湾有事は必然的に戦争とイコールだろうか。中国には、両岸の市民交流の再開に強い関心を抱いている人もいた。長年の情報の非対称性、政治的障壁、メディアの拡張された誤訳が、地域間に深い反感と悪意を生み出しているとも感じた。しかし、互いに足を運び、心を開いて互いを見ることができれば、不当な敵意や憎しみをかなりの程度落とすことができるのではないか。

 両岸関係、あるいは台湾問題の解決は、その内在的なロジックとルートを通じて展開していくことが可能だ。しかしこの方法は、安倍氏が唱えたところの「台湾有事」の三段論法の中では巧妙に消えてしまい、米国のエリート層の視野にも全く入っていない。