自転車の夢、諦めないで 沖縄工業高で外部コーチ務めた渋谷さんが「琉球スターゲイザー」始動 卒業後の競技継続を支援


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
渋谷久路さんの先導でトラックを周回する選手たち=4日、県総合運動公園自転車競技場(喜瀬守昭撮影)

 沖縄工業高で自転車競技の外部コーチを務めた渋谷久路(ひさみち)さん(49)がこの春、高校を卒業した若手選手が競技を継続できるように支援するプロジェクト「琉球スターゲイザー」をスタートさせた。渋谷さんの指導の下、現在8人の選手が競技に取り組んでおり、5月11~15日に静岡県で行われる第92回全日本選手権大会トラックレースには4選手が出場する。

■ポテンシャル

 「高校在学時は補助もあるが、卒業後は選手が費用を全て負担することになる」と渋谷さん。時に100万円を超える機材や遠征費用がかせとなり、競技を諦める選手も少なくないという。「この状況を何とかしたい。せっかく強くなってきたのだから何より続けさせたい」と、選手への機材貸し出しなどで競技環境を整えている。

 プロジェクト名は、かなえるべき夢を星(スター)に例え、その星をつかむべく、ぶれずに見つめ続ける者(ゲイザー)になる―との思いが由来だ。新城幸也や内間康平、新城雄大、伊藤颯馬らの名を挙げ、「沖縄の若手は身体的にも精神的にもポテンシャルは高い」と、彼らに続く選手の誕生を期待する。

琉球スターゲイザーの渋谷久路さん(後列左)とメンバー

■一から全てを

 短距離なのか、中・長距離なのか。体格、性格から適性を見極め、向いている種目ごとの楽しさを伝えつつ選手一人一人と話し合って種目を絞り込む。

 沖縄工業高をこの春卒業した謝花勇哉(19)はスプリントに取り組む。「自転車のことは一から全て教えてもらった」と、渋谷さんに感謝する。渋谷さんを介して在学時から名門クラブチーム「スミタ・エイダイ・パールイズミ・ラバネロ」に所属し、卒業後も競技を継続。近く日本競輪選手養成所を受験する予定だ。

 「資金がなくて大会に行けない、競技をやめる選手も周りにいた。夢を追えなくなるというのは悔しいと思う」と謝花。「プロジェクトのおかげで、企業や個人から支援をいただいて選手の負担はだいぶ軽くなった」と続けた。

 同じく全日本に出場する渋谷一斗(21)、謝花と同じ短距離で互いに高め合ってきた仲原颯志(19)は資金的な面だけではなく、仲間が切磋琢磨(せっさたくま)し続けられる環境が整えられる意義を語る。

■輪を回す

 プロジェクトは現役選手だけではなく、引退選手のサポートも目的にする。渋谷さんは温暖な沖縄の冬場は合宿先として適地であることを強調し、「将来、沖縄にトレーニング、宿泊施設も設けたい。現役時はそこでトレーニングし、引退後はそこで働いて後輩のトレーニングを支える。自転車にずっと関われる環境を整えたい」と夢を語る。

 「プロジェクトからプロ選手が出て、先輩たちが後輩たちを支えていく。企業や個人からの支援だけではなく、自助と互助の輪を回していきたい」。選手たちと星をつかむべく琉球スターゲイザーは長いロードにこぎ出した。
 (安里周悟)

    ◇    ◇

 プロジェクト「琉球スターゲイザー」では、レース以外の土日祝日午後1時から県総合運動公園で練習している。自転車競技に興味関心がある子どもたちへの体験会も近く開催する予定。問い合わせは電子メール20020313itto@gmail.comまで。