沖縄戦、米統治経て文化の村づくり 苦難越えた読谷の歴史、歌に乗せ 「鳳の花蔓」愛知で公演、観客1000人魅了 作曲家・藤村さん構想


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戦禍と戦後の苦難の歴史の中で読谷村民が一体となって文化村づくりにまい進してきた実話で構成した「鳳の花蔓」公演=5日、愛知県東海市芸術劇場(坂下孝則さん提供)

 【愛知】「読谷村の偉大な挑戦」として実話に基づいたオラトリオ「鳳(おおとり)の花蔓(はなづる)」公演が5日、愛知県東海市の芸術劇場大ホールで開かれ、満席となる千人の観客が詰めかけた。劇構想は作曲家の藤村記一郎さん。沖縄に新婚旅行で訪れ、その後幾度となく通ううちに参院議員を務めた山内徳信元読谷村長らに出会う。その中で悲惨な沖縄戦や、戦後米統治下の不条理の歴史を知り、衝撃を受けた。

 構想に20年もかけ、日本ペンクラブ所属の佐々木淑子さんに台本・作詞を依頼し、完成させた。藤村さんの70歳の記念公演コンサートでもある。

 舞台には名古屋青年合唱団、愛知子どもの幸せと平和を願う合唱団など総勢100人余が出演した。

 約1時間の劇は「天地創造」「チビチリガマを抱きしめよ~暗黒の闇~」「屍(しかばね)の上に輝く星~私は忘れない~」「ここはわしらの土地」「絶体絶命」「大統領への手紙」など11場面で構成。村長を先頭に米軍に取り上げられた土地を取り戻し、憲法に基づく文化の村づくりへ粘り強く闘う姿を描く。

 ガマの場面では大人たちに交じって子どもたちが熱演。終幕は沖縄音階の曲に乗って村のシンボル「鳳」が平和の希望を託されて舞台を駆け回り、拍手は最高潮に達した。

 多くの沖縄出身者も来場した。その一人、愛知県内で三線教室を主宰している読谷村出身の観客は「チビチリガマ、シムクガマはよく行って掃除をした所だ。米軍のこと、日本兵が自決用の毒を渡したことなどをありのままに伝えてくれて、魂に訴えていた」と感銘した様子で語った。

 同公演は12月24日、同村文化センター鳳ホールで開催される。受け入れ実行委員として観劇した小橋川清弘さん(65)は「県外の方が本当にあったことを形にしてくれ感動した。沖縄公演を成功させたい」と力強く舞台であいさつした。

(古堅初子通信員)