民間のIT人材、行政が育てます 県内自治体で育成講座が続々開講 その狙いは


この記事を書いた人 琉球新報社
宜野湾市のシビックテック養成講座でプレゼンをする受講者=3月、宜野湾市民会館

 IT人材の育成に向けて、行政が一般のデジタル人材を育成する取り組みが県内自治体で広がっている。各自治体が無料で提供するデジタル人材育成講座の受講者らから地域課題を解決するプロジェクトが生まれたり、企業の業務改善につなげたりする事例が出るなど、既に「実績」を上げている。各講座ともリスキリング(学び直し)や人脈拡大を目指す社会人に好評で、各自治体は2023年度も同様の講座を開講する予定だ。

 宜野湾市は、市民がデジタル技術を生かして地域の社会課題解決につなげる「シビックテック」の実践者を育成する講座を21年度から開講している。県と浦添市は22年度から企業や地域のデジタル化に向けた中核人材を育成する目的で「DX人材養成講座」を初めて開講した。糸満市も22年度に収入が少ないシングルマザーの就労支援を目的としたIT技術取得講座を開いた。

 各講座とも「ICT(情報通信技術)」を活用して地域や企業の課題解決を図るための考え方や技術を学ぶ内容だ。IT技術の有無にかかわらず、多様な背景を持つ受講者らがチームを組んで課題解決を目指す。好評を博しており、参加者らは受講後もさまざまなプロジェクトを継続している。

 行政がIT人材の育成を進めるのは、企業の生産性向上に向けたデジタル化を後押しする狙いがある。そのほか、将来的な人口減少により社会のあらゆる分野でマンパワーが不足する事態を見据え、産学官民連携で課題解決を図る社会の構築を目指している。

 浦添市の担当者は「電子申請など行政のデジタル化を進めているが、役所だけで進めても効率的ではない。地域住民の『DXアレルギー』を解消する取り組みをこれからも続けたい」と語った。
 (梅田正覚)