【識者談話】自衛隊も「基地負担」に 気付かぬうちに有事最前線に 佐藤学氏(沖国大教授)


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 5月12日、国境離島や米軍、自衛隊施設周辺などの土地取引を規制する「土地利用規制法」の対象区域の候補地に沖縄県内39カ所が初めて提示された。今後の影響や懸念は。識者の見解を掲載する。


 安保関連3文書の改定で、沖縄県内への自衛隊の増強が進む上、土地利用規制法の対象区域に先島などが指定されたことで、改めて自衛隊基地の存在が基地負担として顕在化している。本島の米軍基地周辺も指定されるだろう。

 区域指定で政府による監視が可能となる。自衛隊施設の機能を妨害する行為を「機能阻害行為」として見張り、さまざまな理由をつけて私権を制限することができる。

 沖縄は県民生活を脅かす過重な米軍基地負担の解消を訴えてきた。今後、県民は自衛隊基地問題も「沖縄の基地負担」という認識を持たないといけない。

 玉城デニー知事は増強を続ける自衛隊に対して強く反対する姿勢を示してこなかった。米軍基地問題だけを課題として取り上げていたら、裏口から自衛隊を含めた基地負担が増していった形だ。

 沖縄の自衛隊は日本の防衛政策の最前線として運用されていく。米軍と一体化の度合いを強めていて、有事の際は米軍の軍事行動に追随するだろう。土地利用規制法の指定は戦争回避を訴える運動を阻害する重大な節目だ。沖縄は気付かぬ前に有事の最前線に立たされているということもあり得る。

(政治学)