【記者解説】島民の暮らし度外視 土地規制法、沖縄39カ所指定 「機能阻害行為」解釈に幅 運用に不安ぬぐえず


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 土地利用規制法の区域指定で、沖縄が初めて対象となった。決定されれば「(対象となる)ほぼ全ての離島」(内閣府関係者)を含む県内39カ所の「特別注視区域」「注視区域」について政府は必要に応じ利用状況を調べることができる。

 調査範囲は、不動産登記簿、住民票から土地・建物の所有者名、国籍にまで及ぶ。島全体が対象の久高、粟国、多良間、水納の各島では、調査動向の対象は島民全てとなる。土地の売買などについて日常的に国家権力の監視の目にさらされる。住民の暮らしへの影響は安全保障を理由に度外視される形だ。

 さらに気がかりなのは、罰則規定のある「機能阻害行為」の運用だ。定義について法案審議でも解釈を巡って紛糾した。

 同法の立案に携わった内閣府幹部は「デモや集会を制限するものではない」と強調するが、不安は拭えない。

 基本方針は「行為類型」について「安全保障をめぐる内外情勢の変化、技術の進歩、法の運用状況等を踏まえ、適宜に見直しを行う」と記述。あまりに幅を持たせた書きぶりだ。

 明確な線引きはないのか。こうした問いかけにも、同幹部は「例示を書き切ることはできない。なるものもあるし、ならないものもある」と明確な根拠を示すことはなかった。政府は「公正中立な立場」として審議会を設置したとするが、第三者としての本来の機能を果たせるかは未知数だ。

(安里洋輔)