【深掘り】土地規制法、不動産関係者の懸念「リゾート開発、やりにくく…」 新たに「目に見えない心理的」基地負担も


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与那国島(資料写真)

 自衛隊や米軍基地の周辺、国境離島など政府が安全保障上重要とする土地の利用を調査、規制する土地利用規制法を巡り、内閣府は12日、県内11市町村の離島などを区域指定の候補地として示した。このうち、国境離島であることを理由とした場所には19カ所が挙げられた。だが、区域を明示した地図は次回審議会終了後に公表するとして現段階では示しておらず、対象となった離島に暮らす人々の懸念を残したまま議論は進むことになる。

 国境離島の指定は、領土から12カイリ(約22キロ)の領海設定の基準点となる「領海基線」について、土砂採取といった開発行為で削られることから守ることを目的としている。

 政府は領海基線から1キロ以内の範囲で規制区域を指定する方針。今後は対象となる自治体に区域図案を送付した上で意見を聴取し、8月ごろをめどに正式決定する方針だ。

 政府は今回の候補地選定に当たり、「人目が届きにくい」(内閣府担当者)状況にある国境離島を優先したと強調。今回で国境離島としての指定はおおむね終えたとの認識を示した。

 一方、政府関係者によると沖縄本島については領海基線を理由とした区域指定は今後も行われる予定だ。米軍基地の指定を含め、県内の区域指定は、今回を皮切りに矢継ぎ早に行われる可能性がある。

 県内では米軍専用施設と自衛隊施設を合計した総面積が2019年以降3年連続で増加している。1月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)では南西諸島での共同演習や施設の共同使用の推進で一致するなど、「基地負担の軽減」とは逆行する取り組みが顕著になってきた。

 その中での区域指定に県関係者の一人は「法制度面での制限も加わることになる。目では見えない、心理的な負担の増加になるとの見方もできる」と強い警戒感を示した。

 注視区域では、土地の利用状況について継続的な調査が行われることになる。特別注視区域となれば、土地などの所有権移転時には事前届け出が求められることになる。

 不動産デベロッパー関係者は「離島でリゾート開発を手がける立場としては、やりにくくなる」と影響を懸念した。

 県外では、沖縄に先駆けて注視区域や特別注視区域に指定され、2月に施行された地域がある。

 県幹部は「商取引を含めさまざまな影響が懸念される」と語った上で「先行事例を研究したい」と、県民への影響を慎重に分析する。

(知念征尚)