日本、1次リーグ突破に挑む 「米国組」が戦力底上げ、「国内組」奮起に期待 バスケW杯、開幕100日前


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バスケットボール男子W杯アジア2次予選のバーレーン戦で、試合を見守る日本代表のホーバス監督=2月、高崎アリーナ

 日本、フィリピン、インドネシアが共催し、沖縄アリーナが国内唯一の会場となる8~9月のバスケットボール男子ワールドカップ(W杯)は17日で開幕100日前。4月末には1次リーグの組み合わせが決まり、E組の日本はオーストラリア、ドイツ、フィンランドといずれも格上との対戦となった。チームの目標はアジア最上位に与えられる来年のパリ五輪出場権の獲得。各組2位までの1次リーグ突破に挑む。大会は32チームが参加し、8月25日に開幕。日本は2019年の前回W杯や開催国枠で出場した21年の東京五輪では全敗しており、今回も厳しい戦いが予想される。五輪後に就任したトム・ホーバス監督は、参戦が期待される米プロNBAの八村塁(レーカーズ)や渡辺雄太(ネッツ)ら「海外組」と、Bリーグ勢の「国内組」との融合を図り、最強チームの構築を目指す。6月から代表合宿が始まる予定だ。

 17日で開幕100日前のバスケットボール男子ワールドカップ(W杯)に臨む日本代表では、Bリーグでプレーする「国内組」の奮起にも期待がかかる。東京五輪で女子を銀メダルに導き、男子監督に転じたトム・ホーバス監督は、年齢や実績にかかわらず特長のある選手を次々と発掘。名古屋Dの須田侑太郎や、今季はSR渋谷でプレーした井上宗一郎ら「ホーバス・チルドレン」は、監督への感謝を胸に貢献を誓う。

 それまで代表とは「無縁だった」という31歳の須田は2021年11月のW杯アジア予選で主要国際大会に初めて招集された。当初は持ち味を発揮できなかったが、昨年6月の代表合宿で監督から「このままじゃ(メンバーに)残せない。須田の『スペシャル』は3点シュート」と告げられ、プレーから迷いが消えた。

 「隙があったら打ってやろう」と臨んだ7月のアジア・カップは、シリア戦で3点シュート12本を放ち、9本成功。「やっと代表として認められた」と自信をつけた。今季はBリーグでの3点シュート試投数が昨季の133本から372本に急増。「キャリアのターニングポイントをつくってくれた」と監督に恩義を抱く。

バスケットボール国際強化試合のイラン戦でゴールを狙う井上=2022年8月、ゼビオアリーナ仙台

 24歳で201センチのフォワード井上は、Bリーグではほぼ無名の存在だったが、昨年6月に若手主体の日本協会の強化合宿に参加したことが転機となった。3点シュートが得意な大型選手を探していたホーバス監督の目に留まり、7月に代表デビューを果たした。

 リーグでは外国籍選手との定位置争いに苦しみ、先発出場は3シーズンでわずか1試合。一方、代表では先発で起用されることも増え、W杯アジア予選の3点シュート成功率は日本勢トップの38・2%をマーク。「人生を変えてくれた。トムさんと一緒に勝ちたい」との思いが原動力だ。

 196センチでパワフルなプレーが魅力の吉井裕鷹(A東京)や188センチと司令塔としては大柄なテーブス海(滋賀)らホーバス体制で代表へと引き上げられ、能力が開花した選手は少なくない。技術だけでなく「ハングリーな選手」を起用してきたという監督。まな弟子たちはパリ五輪出場権を争う今夏の大舞台でも貴重な戦力となりそうだ。


「米国組」が戦力底上げ 八村、渡辺は群を抜く実力

 

(左から)ウォリアーズ戦でシュートを放つレーカーズの八村=10日、サンフランシスコ(USAトゥデー・ロイター=共同)。セブンティシクサーズ戦で得点を喜ぶネッツの渡辺=4月、ニューヨーク(AP=共同)

 日本代表の戦力を大きく底上げすると期待されるのが「米国組」の選手たちだ。代表格が米プロNBAで奮闘する八村塁(レーカーズ)と渡辺雄太(ネッツ)で、2人とも高さと得点力を備え、実力は群を抜く。全米大学体育協会1部ネブラスカ大の富永啓生の3点シュートや、NBA下部Gリーグの馬場雄大(レジェンズ)のドライブも攻撃に厚みを加えそうだ。

 203センチの八村は「僕は攻撃でいろんなことができる」と自負する。今季レギュラーシーズンでは1試合平均11・2点を挙げ、ゴール下の攻防にも強い。リバウンドやブロックも含め、日本の弱点を補える大黒柱だ。

 206センチの渡辺はレギュラーシーズンで3点シュートの成功率44・4%を記録。守備ではプレーの読みや俊敏性を発揮し、長い腕を生かして相手の攻撃を阻む。シューター富永は勢いづくと止められない。3点ラインから離れた位置からも射抜く精度の高さも持つ。

 八村はこれまで出場するかどうかを明言しておらず、渡辺は参戦に意欲的だが、来季去就が未定で新たに契約するチームの意向が出場可否に影響する可能性もある。富永も大学卒業などを待たずにNBAのドラフト対象選手となる「アーリーエントリー」制度に申請しており、不透明な部分を残している。
(共同通信)