子を支える責任はみんなに 教員定数、改善計画の再開急げ 佐久間亜紀氏(慶應大教職課程センター教授)<先生が足りない シンポ事前インタビュー>


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佐久間 亜紀氏

 琉球新報社はシンポジウム「教員不足 打開への一歩」を21日午後2時から、那覇市泉崎の琉球新報ホールで開催する。慢性的な教員不足から、学級担任を配置できない、県独自の少人数学級を一部で実施できないなどの問題が起こっている。問題の解決に向けて、学識者、教育行政、教職員、保護者などの立場から5氏が登壇し、多角的な視点で解決策を考える。開催を前に、登壇者や関係者をインタビューした。

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 ―これまでの調査や研究で感じたことは何か。

 「非常勤講師や臨時的任用教員の確保が難しくなっていることは2000年代後半から漏れ聞こえていたが、ここ5年ほどで担任が配置できないほど深刻化した。教員が不足し、一番大きなしわ寄せを受けるのは子どもたちだ。教員は不足教員分の仕事をしなければならず、長時間労働を余儀なくされ、教員志望者が減って不足が深刻化するという負のスパイラルに陥っている」

 ―なぜ教員不足が深刻化したのか。

 「教員の自殺率の高さや精神的な負担の重さは、1990年代からすでに指摘されていた。さらに悪化させたのは2001年以降、小泉政権での行財政改革だ。日本経済を再建する改革の中で公務員の削減が目指され、地方公務員である教員も少子化を上回るスピードで削減された。また地方分権が行われ、教員の数や給与に関する国の規制が緩和されたため、財政が厳しい地方自治体は、非正規教員を増やして人件費を抑制した。人手は減らされたのに、教育改革は進み、新たな業務は増えていった。教員一人当たりの負担は当然大きくなる。教員にとって持続可能な労働環境になっていない」

 ―教員不足解決に向けて課題は何か。

 「県民一人一人が、これは自分の問題だと認識することがとても大事だ。子どもを支える責任は、教師だけでなく私たちみんなにある。沖縄は県経済が特に厳しく、教育に十分な予算をかけられない状況にある。限られた予算だからこそ、どう優先順位をつけて予算を当てるのか、真剣に議論し、県議会で決断する必要がある。そしてもちろん、これは県が自己責任で全て解決できることではない。国には2005年以降ストップしている教職員定数の改善計画の再開を求めることは、言うまでもない」
 (聞き手・嘉数陽)

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 さくま・あき 慶應義塾大学教職課程センター教授。早稲田大学教育学部卒。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学後、博士(教育学)。専門は教育学(教育方法学、教師教育、専門職論)。日本教育学会理事・日本教育方法学会理事・日本教師教育学会理事。教職の専門性や力量形成について、日米比較史やジェンダーの視点から研究するとともに、実際に各地の学校現場で教師らと共に授業づくりに取り組む。


 シンポジウム「教員不足 打開への一歩」は21日午後2時から、那覇市泉崎の琉球新報ホールで開催する。予約不要、直接会場へ。資料代500円。

 基調講演は佐久間亜紀氏(慶應義塾大学教職課程センター教授)。パネル討論は佐久間氏のほか、浜田京介氏(中城村長)、上江洲寿氏(県教育庁働き方改革推進課長)、木本邦広氏(沖教組中央執行委員長)、宮﨑豊氏(恩納小学校PTA会長)が登壇する。

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