琉球王国時代の那覇士族、志良堂家の家系に関する記録「新参密姓家譜(しんざんみつせいかふ)」がブラジルでこのほど見つかり、県立図書館に寄贈された。同図書館が19日に発表した。この家譜は志良堂家がブラジルへ移住した後も約100年にわたって受け継がれ、子孫の志良堂ニウトンさん(県系3世)が県立図書館に寄贈した。
新参密姓は薩摩藩那覇在番奉行の随行として琉球に来た日高六右衛門を父に持つ志良堂親雲上(ぺーちん)清房(せいぼう)が元祖。寄贈された家譜は5世の清格(せいかく)(1767年生まれ)から7世の清智(せいち)(1843年生まれ)までを記録している。最後の記録は1859年。ニウトンさんは清智のやしゃご。家譜は1927年、ニウトンさんの祖父・清源さんがブラジルへ移民した際に、持参した。
今年2月に県教育委員会がブラジルのカンポ・グランデで県系移民資料の調査や収集をした際、ニウトンさんから寄贈された。
家譜は1689年に首里王府に仕える士(族)層に編集が許された家系の記録で、戸籍と履歴が主な内容となっている。琉球士族の家譜は約3千冊あったが、沖縄戦での消失などによって現存が確認できるのは約1200冊。寄贈された家譜は現存が確認されていなかったものだ。
家譜に詳しい前県立博物館・美術館長の田名真之さんは「貴重な紙資料の多くを焼失した中、王国時代の資料が新たに見つかったことは素晴らしい」とコメントしている。
県立図書館の資料班長の大森文子さんは「歴史研究では、資料がないことが壁となって、歴史をたどれないことが多い。(家譜は)職制や位階制、成人の儀式の記録がつづられ、歴史の穴を埋める資料になり得る」と推測した。
原本は県立図書館に保管され、ポルトガル語に翻訳しニウトンさんに提供する。県立図書館では貸し出し用と館内閲覧用の2冊の複製を置いている。今後、デジタルアーカイブで閲覧できるようにする。 (高橋夏帆)