【深掘り】「常駐狙い」の疑念も PAC3先島展開1カ月 防衛省関係者「北朝鮮の発射次第」


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航空自衛隊宮古島分屯基地内で構えるPAC3の発射台=4月27日午後6時半ごろ、宮古島市上野野原

 北朝鮮による「軍事偵察衛星」の打ち上げに備え、防衛省・自衛隊が先島諸島への地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の展開を開始してから1カ月となった。打ち上げ時期は5月に入って不透明な状態となっていたが、北朝鮮の新たな動向もあり、防衛省は情報収集を急ぐ。PAC3の展開も長期化し、県内では防衛省に対して説明不足との批判や配備常態化を狙っているのではないかとの不信感が渦巻く。

 浜田靖一防衛相が4月22日に破壊措置準備命令を出し、防衛省・自衛隊は23日から本格的に石垣市や宮古島市、与那国町への輸送作業を進めた。

 ■訓練の結果

 PAC3の機材搬入では一部の港湾で使用の調整が付かず計画変更もあったが、4月末に主要な機材の移動を終えた。

 ある自衛隊関係者は「過去の訓練が役に立った」との見方を示す。2022年11月の日米共同統合演習「キーン・ソード23」では、与那国町へ「16式機動戦闘車(MCV)」を空輸し、与那国空港から陸自与那国駐屯地までの公道を自走させた。

 展開ルートや課題などは共有されていたとみられる。21年の自衛隊統合演習では石垣市の石垣港に自衛隊の船舶が入港した。

 先の自衛隊関係者は「一度使った事があるのとないのとでは違う。どう着陸や着岸をして、どの道を通ればいいか分かる」と語った。別の自衛隊関係者も「先島は小さい島が多く通る経路は決まりきっているので(過去を)参考にしやすい」と話した。

 ■不信感

 「あんなに慌てて部隊を展開したのは何だったのか」県政与党県議の一人は、PAC3の先島展開から1カ月を振り返り、不満をあらわにした。PAC3の展開を巡ってはもともと「常駐配備に向けた地ならしではないか」との疑念がくすぶる中、配備は長期化する。先の与党県議は部隊展開段階で港湾使用のめどが立たず、部隊輸送に乱れが生じた事に触れ「地元に混乱を招きながら住民合意を省いて展開した」と厳しく批判し、政府の情報収集能力に疑問を呈した。

 一時期は北朝鮮の動きが不透明で「いつまでも展開しているわけにはいかない」(防衛省幹部)として、長く発射の兆候がなければPAC3部隊を撤退させる可能性も浮上した。だが、北朝鮮メディアが17日、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記が16日に打ち上げの準備委員会を視察し、今後の行動計画を承認したと伝えた。

 衛星発射に関する新たな動きがあったものの、具体的にいつまで展開が続くのかという疑問について防衛省関係者は「北朝鮮の発射次第だ。日本側で決められるものではない」と語った。
 (明真南斗、知念征尚)