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「2人ママ」で妊活、子育て 同性カップル、多様な幸せをウェブで発信


この記事を書いた人 Avatar photo 慶田城 七瀬
2歳になる子どもと海遊びするMatoさん(左)とトゥーたんさん=2022年7月、名護市(本人提供)

 将来家族をつくりたい性的少数者(LGBTなど)にとってロールモデルが少ないと感じ、性的少数者の多様な家族像を発信し続けている県内出身・在住のMatoさん(38)。自身も女性の同性愛者としてパートナーとの妊活や子育てに取り組み、その過程をウェブサイト「fufuーhug(ふふはぐ)」で紹介している。性自認や結婚へのプレッシャー、出産への憧れ、家族や精子提供者との関係、病院でのカミングアウトなど、自身の経験から、同じような悩みを抱える当事者に寄り添いたいと考えている。(慶田城七瀬)

 Matoさんは、パートナーのトゥーたんさん(36)と知り合うまでは、男性と結婚して家庭を築き親を安心させたいと考えていた。幼少の頃から女の子が好きだという自覚があったが、いけないことだと感じたり、一過性のものだと考えたりしていた。大学4年で初めて女性と付き合った時「自然体でいられる」と感じたものの、同性婚が認められていない中、関係性のゴールが見えにくく、ずっと続けられるものではないと考えていた。

 30歳を過ぎて周囲に結婚や出産する友人が増えると、「そろそろ男性と結婚して子どもをつくらないといけない」と焦り、男性との婚活にも取り組んだ。

ありのままの幸せ

 そんな中、行きつけの店で顔見知りだったトゥーたんさんと交際に発展した。トゥーたんさんに言われた一言が人生を変えた。

 「レズビアンでも家族が欲しいし、子育てもしたい。付き合いたいけど一緒に将来のビジョンが描けないなら付き合わなくてもいい」。

 そういう未来もあるのかと感じ「ありのまま幸せになってもいいのかなと、道が開けた感じがした」。その後の人生を共に歩もうと決めた。

出産に向けて

 同性カップルが子どもを欲しいとなった場合、里親になったり、第三者から精子提供してもらったり、卵子提供による代理出産をしてもらうなどの選択肢がある。2人は精子提供を受けようと決めた。提供者への条件として、子どもが会いたくなったときに会ってくれること、子どもがルーツを知りたいという気持ちを尊重したい、ということなどを条件とした。

 2人は同性愛の男性の知人に提供を依頼した。時間をかけて自分の大事な人と相談して決めるように伝え、OKの返事をもらった。提供者のパートナーや両親にも会い、丁寧に関係を構築した。

戸籍上はシングルマザー

 Matoさんが妊活を始めた時は34歳。いざ妊活を始めてみると、不妊治療専門の病院では「結婚している人のみ対象」と言われたこともあった。

 「結婚していなくても子どもが欲しい」と伝えた上で、受け入れてくれた病院で不妊治療に取り組み、半年後に妊娠した。しかし「検診や出産を断られたらどうしよう」という不安から、パートナーが同性であることを主治医に伝えられずにいた。安定期に入った頃に打ち明け、病院は「一妊婦として対応する」ことになった。

 Matoさんは、戸籍上はシングルマザー。居住地には公的なパートナーシップ制度がなく「誰もが平等に婚姻の権利が認められてほしい」と願う。

 同性カップルが子どもを育てることに対し、周囲からは「子どもがいじめられたらどうするのか」という言葉を向けられることがある。「性的少数者=弱者、かわいそう、であってはいけないと思う。いじめられない環境をつくっていくことが必要ではないか」。今後は多様性をテーマにした絵本の読み聞かせなど、幼少期から理解を深める活動も視野に入れている。

トークショー、個別相談も

 Matoさんたち家族の経験は、自ら運営するウェブサイト「fufuーhug(ふふはぐ)」で紹介している。本やネットにある体験談は、著名人などが多く「どこか遠い他人事に感じた」(Matoさん)ことから、身近なロールモデルを紹介することで「自分事として、将来を真剣に考える参考にしてもらいたい」と考えた。個別相談やライフプランの作成も支援する。

性的少数者の多様な家族の形をイラストで描き、メッセージを添えて発信する「#いろいろかぞくずかん」のインスタグラム

 インスタグラムでは「#いろいろかぞくずかん」と名付けて性的少数者の多様な家族の形をイラストで描き、メッセージを添えて発信している。発信したい家族も募っている。

 性的少数者の当事者のトークショーも随時開催する。2回目となった21日は、女性から男性へ性転換したトランスジェンダーのMakiさんを招き、性転換に至るまでの過程や、結婚や子育てについてオンラインで語ってもらった。今後のスケジュールはウェブサイトやインスタ、LINEで確認できる。