最高裁、被害者の視点欠く 沖縄県内の支援団体、河井弁護士が批判 重大少年事件の記録廃棄問題


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重大少年事件の記録廃棄問題について意見を述べる「犯罪被害者支援ひだまりの会okinawa」の河井耕治弁護士=26日、那覇市首里石嶺町の河井耕治法律事務所

 重大少年事件の記録が廃棄されていた問題で、最高裁が調査報告書を公表したことを受け、「犯罪被害者支援ひだまりの会okinawa」の河井耕治弁護士(56)が26日、沖縄県那覇市内で琉球新報の取材に応じた。重大少年事件に関わり、長年被害者支援に携わってきた経験から、報告書を「被害者側の視点が入っていない」と批判した。

 廃棄問題では、長崎市で2003年に4歳男児が12歳の中1の少年に誘拐され殺害された事件や、佐世保市で04年に小学6年の女児が同級生の女児に殺害された事件の記録も対象だったことが明らかになっていた。両事件とも日本社会を震撼(しんかん)させた事件だった。

 長崎県出身で、1998年から弁護士活動を始めた河井さん。02年に長崎犯罪被害者支援センターの設立に関わり、長崎市の事件は被害者側代理人の一員を務めた。佐世保市の事件でも被害者側の支援に携わった。

 報告書によると、裁判所は、両事件の記録を事実上の永久保存に当たる「特別保存」に該当するかどうかを一時検討した。しかし管理職が「全国的に社会の耳目を集めた事件ではない」と考え、記録は廃棄された。

 河井さんは「遺族は全ての事件を永久保存してほしい思い。裁判所はあっさり廃棄し、どれだけ遺族を傷つけるのか」と憤る。記録に当事者のプライバシー情報が無数含まれ、裁判所が保存認定に及び腰な姿勢に対し、「プライバシー情報の持ち主でもある被害者側の意見を聞いてほしい」と要望。事件当時幼かった被害者のきょうだいが、後に記録を通して事件を調べる可能性も指摘した。

 最高裁の調査手法なども問題視している。調査のための有識者委員会や今後設ける第三者委員会に被害者側がおらず、保存認定の過程で被害者側の関わりが表記されていなかった点も問題とみる。「無意識に差別し、当事者軽視が甚だしい」と語気を強めた。

 また廃棄問題で裁判所には、(1)保存認定の過程や基準が欠如していた環境(2)最高裁から記録廃棄を求めるようなメッセージがあった動機(3)事件の矮小(わいしょう)化という正当化―の3要素があったと分析する。この「環境」「動機」「正当化」の3点がそろうと不正が起きるとされる「不正のトライアングル」の理論が典型的に現れた一方、報告書ではその検証がされていなかった。

 報告書は、記録に「国民の財産」が含まれ、今後の姿勢として「国民目線」で意見を反映させることを強調する。だが、河井さんは「国民の目線を考える前に、被害者の目線を考えてほしい。廃棄された事件の全ての当事者に直接おわびする観点も抜け落ちている」と非難した。

(金良孝矢)