【動画】“守り神”78年ぶりに米国から里帰り 首里真和志町の獅子頭 沖縄戦で米兵が持ち出す 保存会が捜した方法とは?


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米国で見つかり、返還された獅子を開封する保存会のメンバーら=29日、那覇市真和志町(大城直也撮影)

 沖縄戦で焼失したと思われていた那覇市首里真和志町の獅子頭が米国で見つかり、真和志町の人々に29日、返還された。昨年、同町獅子舞保存会が県公文書館所蔵の写真などを調べ、米兵が持ち出したことが判明。フェイスブックで米兵の遺族を捜し、返還にこぎ着けた。29日は住民らが集会所に詰め掛け、米国から空輸された獅子の入る箱を開封した。78年ぶりに里帰りした守り神を「お帰り」と迎えた。

 真和志町の獅子舞は300年以上の歴史があるとされ、獅子の額の三日月の印が特徴。戦後は新たな獅子頭が作られた。

 昨年6月、有志が獅子舞保存会を発足させ、戦前と同じ姿の獅子頭を作れないかと模索した。メンバーの目黒仁士(じんと)さん(16)が、那覇市歴史博物館の資料から戦前の獅子の写真を発見。さらに県公文書館の資料から、沖縄戦当時の米兵が同じ獅子を持つ写真を見つけた。写真の説明文には米兵の「ドロゴシュ」という姓や「彼は拾った獅子頭を故郷の妻に送るつもりだ」という重要な情報が記されていた。

獅子頭返還のきっかけとなった沖縄戦当時の写真。首里真和志町の戦前の獅子の写真と照合し、同じ獅子だと分かった(沖縄県公文書館所蔵)

 獅子舞保存会の山城秀倫(ひでみち)副会長(39)はフェイスブックで同じ姓の人物を検索し、顔が似ている男性にメッセージと米兵の写真を送った。7カ月後、突然「私の祖父だ」と返信が来た。男性が親戚に尋ね、フロリダ州に住む米兵の娘が持っていることが判明した。

 娘は父の形見として獅子を大事に保管していたが、事情を知ると「探してくれてありがとう。あるべき場所に返されるべきだ」と快く返還に同意したという。

 29日に獅子の箱が開封され、迫力ある姿が現れると歓声が上がった。獅子舞保存会の玉城博健(ひろたけ)会長(45)は「奇跡だ。獅子が笑っている気がする」と涙ぐんだ。

 獅子は6月18日午後2時~4時に首里公民館3階で展示される。

(伊佐尚記)