港湾作業50人が自宅待機を検討 理由はPAC3 沖縄・石垣 港湾の軍事利用で組合「安全に懸念」 台風後の物流に影響も


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住民の生活物資などが入ったコンテナが船で搬入される石垣港=3日、石垣市浜崎町の石垣港

 【石垣】石垣市南ぬ浜町の新港地区に防衛省・自衛隊の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が配備されていることを受け、全日本港湾労働組合沖縄地方本部は安全性確保の観点から、市内の港湾業者3社の組合員約50人が6日から自宅待機することを検討している。同本部執行委員長の山口順市さんが3日、新港地区を視察し明らかにした。八重山部会の関係者によると自宅待機となった場合、荷役作業の人手が足りず物流が困難な状況になるという。

 市内のスーパーなどでは台風2号の影響で3日現在も品薄の状況が続いている。港湾関係者は「いろいろな意味で悪循環だ」と述べ、港が軍事利用され、生活が脅かされる現状に苦悩をにじませた。

 山口さんは「港が軍事利用され、安全性が確保されない中で働くことは難しい」と港への配備に懸念を示す。5日に沖縄地方本部の副委員長や書記長、八重山部会の代表者らが石垣市内の港湾業者と組合員の自宅待機などについて協議する。八重山部会の関係者によると、約50人が自宅待機となった場合は、管理職などの人員を荷役作業に充てなければならないという。3社の組合員加入率は少ない社でも50%ほどあるという。

 八重山部会は3月、新港地区から石垣駐屯地へのミサイルの弾薬搬入時にも午前中のみ自宅待機した。新港地区へのPAC3展開を巡っては2012年4月と12月、16年の2月に続き4回目で、PAC3に関する自宅待機は今回が初になる。

 山口さんは地区内に運び込まれたPAC3の発射機や関連車両、小銃を持った自衛隊員らを規制線の外から視察した。宮古島市や与那国町と違い、石垣市では駐屯地内で施設の工事が続いていることを理由に、国有地が大半を占める新港地区にPAC3が設置されている。山口さんは「自分の駐屯地に置けないものを港に置くのは常識を疑う」と批判した。

 防衛省や市から安全性を担保する説明もないとして、「こんな状況で働きなさいと組合員に言えない」と強調した。設置されたPAC3を撤収させることは難しく「こっちは逃げるしかない」として、自宅待機することを想定している。北朝鮮が衛星を打ち上げる期間として通告している11日までの予定だが、PAC3が撤収された時点で自宅待機は解除する。 (照屋大哲)