G7広島サミット 「反・脱植民地主義」前面に <乗松聡子の眼>


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乗松 聡子

 5月19日から21日に開催されたG7に抗議するため、広島に行ってきた。市の公共施設「ひと・まちプラザ」で「地球的問題を考える広島の会」の仲間たちと企画したパネル展示「G7広島サミットの正体―促進するのは平和か、それとも暴力か」とシンポジウム「これでいいのかG7」を開催した。

 G7の目的は、平等や平和、環境よりも、大企業の利益を優先する新自由主義推進の目的を持つ。欧米、日本など、帝国主義の歴史を持つ西側特権国が、歴史的に搾取されてきたグローバルサウス諸国の台頭を阻む「反・脱植民地化会議」とも言える。

 冷戦終結後、米国はその一極覇権を強化するために、自国の資源や市場を米国に差し出すことを拒む、すなわち自己決定権を行使しようとする政権をことごとく敵視し、中国、ロシア、イラン、朝鮮民主主義人民共和国、シリア、ベネズエラといった国々を経済制裁と軍事的政治的介入で弱体化させようとしてきた。

 制裁を批判する団体「サンクションズ・キル」によると、米国は40以上の国、人口でいうと世界の3分の1以上の地域に対し9千以上の国際法違反の制裁を発動しており、今世紀になってから10倍に増えている。米国議会調査局の調査によると、米国は1798年から2022年までに世界中で469件もの外国武力介入を行っており、冷戦終結の1991年以前の200年間よりも、以降の30年間の方が数が多い。攻撃対象にされてきたのはグローバルサウス諸国だ。

 これらの国々はウクライナ戦争についても、背景の歴史をよく分かっており、西側諸国の圧力を受けながらも中立を保とうとしている。ロシアへの制裁に追従しているのも人口にしたら世界の15%程度の国々だけで、圧倒的多数派は停戦と外交による解決を求めている。G7は、これらの世界の声に耳をふさぎ、戦争利益にしがみつく特権集団による「戦争会議」との見方もできる。

 G7に合わせて広島に来ていたグテレス国連事務総長はG7と中国の対立について「世界を二つに割るような分断を避ける」べきだと訴えた。G7に招待されていたグローバルサウスのリーダー国の一つであるブラジルのルラ大統領は、ウクライナ戦争は「G7ではなく国連で」取り組むべきと唱えた。これらの正論は、ウクライナにさらに武器を送り制裁を強化する西側連合の盛り上がりの中でかき消されてしまった。

 G7の会場外で抗議の声を上げていたのは私たちだけではない。期間中、広島や全国、世界各地で反G7、反帝国主義、反核などのデモが行われた。その中には沖縄から来た「ガマフヤー」具志堅隆松さんもいた。広島は全国の警察が結集し戒厳令下さながらの様相で、デモに機動隊が介入し逮捕者も出た。

 各地のデモには多くの海外メディアが来ていたが、開催国日本のメディアの不在が際立っていた。日本メディアは、奇麗事だけでG7を演出しようとする日本政府に気遣う御用メディアだったのか。国際会議に抗議デモはつきもので、タブー視する必要などない。G7は会場の中も外も、異論を封じる非民主の世界だったということだ。

 (「アジア太平洋ジャーナル・ジャパンフォーカス」エディター)