【深掘り】PAC3の民間地展開、前例作りに警戒 自衛隊は別地区も示唆


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自宅待機を見送り「延期」とした経緯などについて説明する全港湾の執行委員=7日午前、石垣市浜崎町の石垣港ターミナル

 石垣市南ぬ浜町の新港地区への地対空誘導弾パトリオット(PAC3)展開を巡る問題は、市内の港湾業者3社の労働組合が安全確保の観点から自宅待機を検討するなど県民生活に影響が出かねない事態にまで発展してきた。組合側によると、防衛省・自衛隊は別の民間地への展開可能性も示唆した。政府は昨年末に閣議決定した安全保障関連3文書で、自衛隊が民間の空港や港湾など公共インフラの使用拡大方針を掲げた。民間地への展開という「前例作り」に警戒感が広がる。

 市内の港運業者3社は約1カ月前から市を通じて新港地区への展開を自粛するよう要請してきた。5月末に北朝鮮が「衛星」発射を試みた時に自衛隊は台風の影響で展開できていなかったが、台風通過後、二度目の発射に備えて新港地区へPAC3を展開した。

 これを受け、3社の労働組合は今月6日、自宅待機を決定して本紙などが報じた。7日には自衛隊担当者と組合が話し合う場が設けられ、組合は自宅待機を見送った。

 防衛省関係者は「『市と調整した上で展開場所を決めているのに』という思いは正直ある。だが物流が止まると言われて何も行動しないわけにもいかない」とこぼした。

 一方、市幹部は「市が説明する立場になく、防衛省側が周知すべき事だ」とした上で「これまでも防衛省には新港地区への展開が危険だと伝え、他の場所を検討するよう申し入れてきた」と強調した。

 組合側によると、自衛隊は7日の話し合いの場で旧石垣空港跡地へ展開する可能性も示唆した。だが、関係者によると、同跡地への展開は地権者との調整の必要性から早い段階で困難視されてきた。

 今後の展開についても、防衛省は「市との調整」で決定するとしているが、市関係者は「市が決められる事ではない」と強調する。さらに、市役所が近く、職員の駐車場として使っている旧空港跡地に変更される可能性は乏しいとの見方を示した。

 県関係者は「だから初めから駐屯地内で展開してくれと言ったのに」と語る。港湾組合が自宅待機を実施すれば「物流にも影響が出かねない」と懸念し「駐屯地外への展開は、安全でないと困る」として地元への丁寧な説明を重ねて求めた。

 港湾関係者は「前例ができてしまえば、PAC3にとどまらず(攻撃能力のある)12式地対艦ミサイルなどが配備されかねない」と懸念を示した。
 (明真南斗、知念征尚、照屋大哲)