選手層の厚さ証明「セカンドユニット」 けが人少なく成長続ける <キングスBリーグ初制覇・最強の証明>5


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
チャンピオンシップのMVPに選ばれたキングスのアレン・ダーラム(右)=5月28日、横浜市の横浜アリーナ(小川昌宏撮影)

 チャンピオンシップ(CS)の最優秀選手賞(MVP)は琉球ゴールデンキングスのアレン・ダーラム、ファイナル(決勝)で最も活躍した選手に贈られる日本生命ファイナル賞はコー・フリッピンが獲得した。共に今季のキングスの強みである「セカンドユニット」の選手で、その2人がCS、決勝で活躍した選手に与えられる賞を獲得したことは改めて、キングスの選手層の厚さを象徴している。

 セカンドユニットとは本来、先発する5人を除いたベンチメンバーの中から選出される、別の5人の選手を意味する。セカンドユニットを導入することで1試合を通して、攻守の強度を落としにくくしたり、主力選手の体力を温存させ、勝負どころでコートに立たせたりすることができる。キングスの場合は、ダーラム、フリッピン、松脇圭志、牧隼利が中心となり、もう1人は試合状況により、先発した選手が継続して入ったり、ほかのベンチメンバーが入ったりすることが多い。選手層の厚いキングスの場合は4人以外も代わる代わるコートに入るため、いつしかセカンドユニットがベンチメンバー全体を意味するようになってきたようにも見える。

 桶谷大HCが掲げた「ポジションレス」でセカンドユニットはより強みを増していく。誰もが複数ポジションをこなしながら、どの選手がハンドラーになっても優位性を保つことで攻守の強度を落ちにくくした。さらに今季はキングスのけが人が少なく、離脱者がいなかったこともセカンドユニットを大きく成長させた。

 昨季は牧、田代直希、渡邉飛勇をけがで欠き、CS決勝では並里成(現・群馬クレインサンダーズ)が体調不良で出場できなかったことでも苦しめられた。今季はトレーナーやコーチ陣などスタッフが、選手の疲労状況を見極めながら、プレータイムを制限したり、外部からけがを予防するためのトレーナーが来たりしていた。さらにシーズン中、負けが続いても、セカンドユニットの成長を信じ続けたことで、選手全体が成長した。多くの選手が試合に出場したことで特定の選手にプレータイムが偏ることなく、むしろプレータイムをシェアできて選手の疲労や負担も軽減され、けがにつながりにくくなる好循環を生んだ。桶谷HCも「今季、けがが少なかったことが自分たちの最後の強みだった。最後、どんな状況になっても、チームとして力を発揮するには、いろいろな選手の成長が必要で使い続けた」と振り返る。

 CS決勝では第2戦後半でセカンドユニットのメンバーが多く出場するなど大活躍。点数だけ見ても先発した選手以外の合計得点は千葉ジェッツが第1戦が4点、第2戦は17点だったのに対し、キングスは両試合ともに45点と圧倒した。優勝を決めた直後の観客に向け、桶谷HCは「見てください、きょうのセカンドユニット。最高っすよ」との言葉で褒めちぎった。

 成熟した「ポジションレス」、そしてチーム全体で成長して得た強力な「セカンドユニット」。この二つがキングスの「チームとしての勝利」をもたらしたと言っても過言ではないだろう。

(屋嘉部長将)
(敬称略)