連覇に挑戦、進化始まる 「新B1」見据え経営も勝負所<キングスBリーグ初制覇・最強の証明>7


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CS初優勝を決めトロフィーを掲げるキングスの選手やスタッフ=5月28日、横浜市の横浜アリーナ(小川昌宏撮影)

 悲願だったBリーグの初優勝をつかみ取った琉球ゴールデンキングス。東地区以外のチームで初制覇した2022―23年シーズンは、キングスだけでなくBリーグにとっても新たな歴史の1ページになった。一方で追われる立場となった23―24シーズンに向け、キングスはもちろん他チームも、それぞれがすでに“進化”を始めている。

 来季の西地区も激戦になりそうだ。今季キングスとともに西地区優勝を争い、チャンピオンシップ(CS)出場を決めた島根スサノオマジック、名古屋ダイヤモンドドルフィンズ、広島ドラゴンフライズは、来季もキングスの前に立ちはだかりそうだ。bjリーグ時代から競い合ってきた大阪エヴェッサや京都ハンナリーズも強敵なのは間違いない。そして、来季からB1に参戦する佐賀バルーナーズ、長崎ヴェルカの昇格の勢いにキングスがどう立ち向かうのかも注目だ。西地区だけでなく東や中地区のチームも、王者キングスから優勝を奪還しようと、新たな選手の獲得などすでに次のチームづくりに動いている。

 キングスもすでに契約更改をしており、少しずつチームは変わってきている。キングス一筋の岸本隆一や主将の田代直希、リバウンド王のジャック・クーリー、CSの最優秀選手賞(MVP)に輝いたアレン・ダーラム、エースの今村佳太ら多くが契約を継続し、チームに残った。一方、優勝の立役者であるコー・フリッピンやジョシュ・ダンカンが退団。松本礼太もチームを去った。今季所属した選手の契約はすべて終わっており、残りは新しい選手や桶谷大HCとの契約などで、オフシーズンの動向も気になるところだ。今年の強みだった「ポジションレス」「セカンドユニット」をさらに磨いていくのか、それとも新しい戦略を生み出すかにも注目は集まる。

 来季はキングスだけが挑めるBリーグ連覇が懸かっている。また、今季は準優勝に終わった天皇杯の優勝も目標になるだろう。4位だった東アジアスーパーリーグ(EASL)のようなアジア大会の勝利にも期待だ。また来季は、米プロNBAに次ぐ「世界第2位のリーグ」を目指し、26年に創設される新たなトップカテゴリー「新B1」への指標となるシーズンになる。キングスは現時点で条件をすべてクリアしている。その状態を維持しつつ、「新B1」へ進むためにも、来季からも経営を含めた勝負は続く。

 CS決勝後、桶谷HCは「Bでまた連続で日本一になるという目標はある。日本一だけでなく世界大会に出ていけるように前を向いて、キングスが日本のバスケットを引っ張っていくつもりでコーチングしていきたい」とすでに先を見据えていた。“ミスターキングス”である岸本も「新しいシーズンは連覇にチャレンジする。もっと強くなって、いいチームになりたい」と笑顔で意気込む。

 多くの挫折と栄光を経験し、今季やっと届いたBリーグの頂点。選手やHCだけでなく、コーチ陣やスタッフ、過去に在籍していた選手やコーチ、スタッフ、キングスダンサーズ、そして県民やブースターが“団結の力”で共に歩んできた軌跡が、沖縄のバスケット文化となり、初優勝という形になった。「沖縄をもっと元気に」の合言葉の下で、南の小さな島からキングスの挑戦はまだまだ続く。

(屋嘉部長将)
(おわり)