金ちゃんヌードル、県民魅了し50年 人口当たり売上高全国一 変わらぬ味、人気根強く


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徳島製粉の田中信義会長(左)と田中忠德社長。購買客からの要望もあり、味は50年間変えていない=5日、徳島県徳島市

 徳島製粉(徳島市)が製造するカップ麺「金ちゃんヌードル」が1973年6月の発売開始から50年を迎えた。西日本が主な販売エリアだが特に沖縄で人気が根強く、人口当たりの売上高は全国トップを走り続ける。その理由は、半世紀変わらぬ味が県民の口に合っていることや、他社のカップ麺とは違ってしっかりふたが閉まるため、サトウキビなど農作業への持ち運びにも向いていたことなどにあるという。

 県内では唯一、総合食品卸の許田商会(浦添市)が代理店として金ちゃんヌードルを仕入れ、県内のスーパーやマチヤグヮー、パーラーなどに卸してきた。50年前、県外業者を通じ徳島製粉を紹介された許田商会創業者の許田栄喜氏(2018年死去)が味を気に入り、「うちに一手に任せてくれるなら」と引き受けたことが始まりだ。

倉庫に積まれた「1週間分」の金ちゃんヌードルを紹介する、県内唯一の代理店の許田商会の許田正博会長(中央)と山内昌幸社長(右)ら=9日、浦添市西洲

 日本復帰直後の沖縄では本土のそばやうどんを食べる習慣は根付いていなかった。既に別の食品大手のカップ麺は進出していたが、許田氏と徳島製粉の当時専務だった田中信義会長(91)を中心に金ちゃんを担いで離島を含む各地を営業で回り、シェアを広げていった。

 しょうゆベースのあっさり味のスープと、卵やシイタケ、エビなどの具材、ふたがしっかり閉まる二重容器の構造は発売当初から変わらない。「一番は、味のおいしさとこしの強い麺が沖縄の人の好みに合ったこと。ふたがきっちり閉まるので、寒い時期のサトウキビ収穫や農作業の合間に食べやすいという声も多かった」。許田商会の許田正博会長(72)は半世紀を振り返り、人気が高い理由をそう語る。

 徳島製粉によると、17~22年の平均でみた年間売上高は愛知県、静岡県に次いで沖縄が3番目。ただ、人口当たりで計算すると沖縄がトップに立つ状況が続く。台風接近時の非常食としてもおなじみで、観光客の需要もあり、他地域と違い暑い夏場も売れ行きは鈍らないという。

 同社の田中忠德社長(71)は「ここまで来られたのは沖縄のおかげでもある。足を向けて寝られませんよ」と感謝。田中会長は「ご飯代わりに毎日食べられる味を目指した。今の味でファンがついとんじゃけん。変えたら意味がない」ときっぱり答えた。 (當山幸都)