5インチ艦砲弾を「耐爆容器」で処理 沖縄総合事務局、新たな不発弾対策を試験導入 避難半径が3分の1に縮小


この記事を書いた人 琉球新報社
米軍5インチ艦砲弾の不発弾処理に試験導入される「耐爆容器」(沖縄不発弾等対策協議会提供)

 沖縄総合事務局は、県内で見つかる不発弾で件数の多い米軍5インチ艦砲弾について、早ければ今年12月にも密閉式の鋼の容器「耐爆容器」を使った処理を試験的に導入する。従来の処理方法と比べて避難半径が3分の1以下に縮小され、発見から処理までの時間も大幅な短縮が見込まれることから、住民の負担軽減や工事の停止による経済損失の減少などが期待される。2024年度以降の本格運用を目指している。

 耐爆容器は神戸製鋼所製で、直径約1メートルの筒型。スライドレールを使って振動を抑えて不発弾を入れることができる。

 沖縄不発弾等対策協議会の中にワーキングチームをつくり、安全性の検証をしてきた。実験の結果、爆風で容器が破壊されないことなどが確認され、12日の協議会で運用案を承認した。総合事務局が各自治体の意向を受けて貸し出す形で試験運用する。騒音や振動、安全性などの観点から、従来の処理作業で万一の爆発事故による破片の飛散を防ぐ「ライナープレート」と比較し検証する。

 避難半径はライナープレートの88メートルから、耐爆容器は25.5メートルに縮小できると試算されていて、本格運用されれば避難対象の住民を減らせる可能性がある。3トントラックに乗せることができ機動的な運用が可能。従来は発見からライナープレートを設置して、処理するまで90日程度かかっていたが、プレート設置がいらないため盗難や暴発のリスクが減少し、工事の停止による経済損失も少なくできるという。

 県によると、22年度に離島も含めた県内で処理された不発弾のうち、住民避難を伴う現地処理は72発、1740キロあり、うち5インチ艦砲弾は38発、1330キロを占めた。今年5月の那覇市立病院建て替え工事現場の5インチ艦砲弾処理では、避難が困難な患者がいたため窓にベニヤ板を二重に打ち付けて対応した。

 総合事務局の担当者は「近くに病院や高齢者施設などがあり避難が難しい場合もある。範囲を小さくできれば負担の軽減につながると思う」と話した。
 (沖田有吾)