本部港クルーズターミナルビル、建設のめど立たず 地元は早期整備を期待するも、ゲンティン香港の破綻で計画に暗雲


この記事を書いた人 琉球新報社
本部港のクルーズターミナル建設予定地。奥の岸壁と手前の緑地は既に整備されている。後方は瀬底島=6月5日(増田健太撮影)

 新型コロナウイルスの影響が和らぎ観光産業が回復するに伴い、クルーズ船の需要は今後高まると予想されている。しかし、本島北部地域の玄関口になると期待される本部港(沖縄県本部町)のクルーズターミナルビル建設のめどが立たない。県はコロナ前の2018年、本部港の国際旅客船拠点形成計画に基づき、国際的なクルーズ船社のゲンティン香港と協定を結んだが、コロナ禍で同社の業績が悪化し、会社精算手続きを進めているため先行きが見通せていない。

 協定は、同社がターミナルビルの建設事業費を全額負担し、最大で年間150日まで本部港を中国や台湾発着のクルーズ拠点として優先的に利用できるという枠組み。当初2023年4月から利用開始予定だったが、同社は業績悪化で会社精算手続きに入った。県は同社側にメールなどで連絡しているが、回答はないという。

 県の担当者は「建設だけなら他の手法も考えられるが、船社との協定で完成後の港の利用がある程度見通せる計画だ。できればこのスキームを維持したい」と話した。今後、ゲンティン香港の事業を承継する会社や、他の船社との交渉も視野に入れている。

 コロナ禍以前の19年、那覇港へのクルーズ船寄港は全国最多の260回を記録。国際クルーズ船を中心に沖縄への寄港は活況を呈した。本島北部には沖縄美ら海水族館や世界自然遺産に登録されたやんばるの自然があり、今後テーマパークの開業も予定されている。本部港への寄港ニーズは高いと考えられる。

 県は本部港の岸壁を整備し、昨年11月に20万トン級の船に対応できる岸壁が完成した。現状でもクルーズ船の寄港自体は可能だが、海外からの船が国内で最初に寄港する「ファーストポート」となるには、CIQ(税関・入国管理・検疫)機能が求められるため、地元はターミナルビル建設に期待する。

 本部町観光協会の當山清博会長は「ファーストポートはメリットが大きい。20万トン級の船だと5千人が来る。北部地区全体でターミナルビルの運営や手配業務を担い、やんばるの各地に分散して案内することで、地域での消費を促したい。コロナ明けのニーズの高まりに間に合わせたい」と期待する。

 県内では、本部港のほかに那覇港と宮古島市の平良港が、船社と連携したクルーズターミナルビルの整備を計画している。いずれも港湾管理者と船社の間で調整をしている段階という。
 (沖田有吾、増田健太)