【深掘り】精和病院の移転・統合の狙いを読み解く 病床数は減少も、総合病院との連携は強化 ゲーム依存症など新たなニーズにも対応


この記事を書いた人 琉球新報社
県立南部医療センター・こども医療センターへ移転・統合予定の県立精和病院=6日、南風原町

 沖縄県は、県立の精和病院と南部医療センター・こども医療センターを移転・統合する方針を示した。両病院の統合により、これまで県内では手薄だった精神身体合併症への対応や若者の精神疾患への治療が強化される見込み。民間の精神科病院が提供しにくい新たな医療ニーズを扱う。病院事業局病院事業企画課の担当者は「民間と協力して今の時代に合った医療を提供する。精神科の病床数は減るが総合病院との連携を強化することで医療の質は落ちない」と強調した。

(梅田正覚、與那原采恵)

 ■精神身体合併症の最大病院に

 移転・統合後、精和病院は現行の休日・夜間救急医療体制は継続するが、国の基準を基に病床数を現在の250床から150床に減らす。南部医療センター・こども医療センターの病床数は県内最大規模の約580床となる。

 精和病院の移転・統合は検討委員会がつくられ、2022年から行政職員や医師らが基本構想案について議論してきた。今後、高齢化の進展とともに身体と精神の疾患が同時に起こる精神身体合併症を発症する人が増加すると予想した。

 両病院の統合で内科や外科などの身体科と精神科でそれぞれの入退院手続きをする必要がなくなるほか、救急窓口が一本化されるため、「たらい回し」の防止など患者の負担軽減も期待される。精神身体合併症に対応できる県内最大規模の病院となる。

 移転・統合後は民間の医療機関で対応が手薄になっているギャンブルやゲーム依存症、子どもの適応障害の治療強化も図る。子どもの数が多い沖縄は、児童の精神疾患が全国よりも高い傾向にあることから児童思春期専門病棟も建設される予定だ。

 ■精神科病棟の発言力低下に懸念も

 国は2004年の精神保健医療福祉の改革ビジョンで「入院医療中心から地域生活中心へ」と打ち出した。県内の精神科病院でもデイケアや外来対応に力を入れており、通院数は増えているものの、入院数は減少傾向にある。

 22年から行政職員や医師らでつくり、基本構想案について議論してきた検討委員会では当初は「病院の収益を理由に行うのではあれば反対」などと反対意見も一部あった。だが議論が進む中、具体的な計画が見えてきたことで、委員らは移転・統合に賛同した。

 ただ、統合後の精神科病棟の発言権が弱まることに懸念の声もあり、県は精神科に「センター長」などの責任者を置くことも今後検討していく。