与那国、台風21号の爪痕今も 被災1ヵ月半


この記事を書いた人 Avatar photo 瀬底 正志郎
台風21号で半壊した家屋。修復が進まない現状に肩を落とす崎元俊男さん=14日、与那国町

 【与那国】9月の台風21号で全壊10戸を含む322戸の住宅が損害を受けるなど大きな被害を受けた与那国島。被災から1カ月半が過ぎたが、半壊した家屋の修復作業はほとんど進まず、雨漏りを防ぐため屋根をブルーシートで覆う家も点在するなど被災者の苦しい生活が続いている。県外と沖縄の離島の住環境の違いによる特殊事情も、復旧が思うように進まない背景としてあるようだ。県独自の支援を求める声も上がる。一方で義援金は14日までに2千万円を超え、町は協力に感謝するとともに引き続き支援を願った。

 「住める状態ではない。修繕するにも島では時間もお金も必要。まだまだ時間がかかる」。瓦屋根が崩れ屋内が風雨にさらされ半壊状態になった家屋を見詰め崎元俊男さん(50)は大きくため息をついた。
 前浜キヨコさん(68)宅も屋根瓦が崩れた。屋内の一部は畳を上げた状態で使用できないままだ。「瓦を直すにも恐らく全部剥がしてみないとどこが雨漏りしているか分からない。瓦屋根をやめてトタン屋根に直す人もいるが、伝統的な瓦屋根がなくなってしまうのは残念だ」と話した。
 台風21号の被害で災害救助法が適用されたが、同法は損害率20%以上の半壊を支援対象としており、町によると、救助が受けられる家屋は計28戸にとどまる。半壊への支援も応急修理に最大56万7千円で、原状回復への予算を補えない状況もあり、住民からは「瓦屋根の家屋は損壊の広がりが本土とは違う。ちょっとの被害でも修復は大掛かりになる」と現状に見合った支援策を求める声も上がった。
 町は、一部損壊でも機能的に半壊状態の家屋などもあることから、地域の特殊事情を考慮した同法による適用拡大を求めている。一方で修繕を図る資材や業者は島外からになり、住民の負担はさらに大きくなる。
 崎元さんは「早期再建を図るためにも県独自の支援も検討してほしい」と訴えた。義援金については11月末まで受け付け、町は年内に被災者への支援を予定している。(謝花史哲)