多忙な教育現場、琉球・沖縄の歴史をどう教える? 危機感と課題…教員や研究者、タレントがシンポ


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多忙化する小中学校での琉球・沖縄の歴史教育について話し合う、県小中学校歴史教育研究会主催のシンポジウム=10日、南風原町の中央公民館黄金ホール

 多忙化する小中学校で、琉球・沖縄の歴史をどう教えられるかを模索するシンポジウム「琉球・沖縄の歴史教育の現状と課題、今後の展望について」(県小中学校歴史教育研究会主催)が10日、南風原町の中央公民館黄金ホールで開催された。小中学校の教員や歴史の研究者らが登壇し、互いの立場で感じている危機感や、課題解決に向けて議論した。

 研究会の会長、屋比久守さんはシンポジウム冒頭で「(琉球・沖縄の歴史を)体系的に学ぶ意義はとても大きい一方で、学校で教える時間が十分ではない。危機感を募らせている」と険しい表情で訴えた。

 パネルディスカッションには南風原小教諭の屋良真弓さん、伊良波中学教頭の内山直美さん、研究会副会長の山内治さん、TSJ主宰のタレント津波信一さん、沖縄歴史研究者の前田勇樹さん、沖縄国際大学の秋山道宏准教授が登壇した。

 津波さんは以前に南城市で演じた劇を紹介した。尚巴志が登場するシナリオに、ハワイ移民の経験がある地元男性のストーリーを織り交ぜた。「現存の人物を登場させることで、みんなが親近感を持ち、移民の歴史も学ぶことができた」と手応えを語り、演劇を通して歴史を伝える可能性に言及した。

 秋山さんは「大学は研究を積み重ねるだけでなく、専門的な知見や水準を基に、これらをどう生かせるのか常に考える。社会と研究の接点をどう考えるかも大事な視点」と指摘した。

 司会で研究会会員の稲嶺航さんは高校で専門外の科目を教えていた経験を紹介しながら「学校の先生は空き時間も子どもたちの対応に追われる。今の現場では教員が考え、新しい物を生み出すことが難しいのではないか」と疑問を投げ掛けた。

 前田さんは「研究の成果を教育現場で使えるよう、仲介役が必要だ。仲介の体制ができればきっと次世代につなげられる」と強調した。内山さんは「先生たちが明日すぐに使える教材や指導案があるといい」と回答、復帰の歴史などを実体験として知らない教員も「生徒と一緒に学ぶ気持ちが大事ではないか」と話した。

 屋良さんは「県民がこれまで何を守り、何を訴えてきたのかを知ることが、子どもが成長する上で大切になる。子どもが話し合いの中で学び、行動につなげられるようにしたい」と話した。山内さんは「教員だけでは難しいところもある。自分たちの歴史や文化をもっと次世代に伝えたいと思う人が増えてほしい」と期待を込めた。

(嘉数陽)