【東京】日本サッカーのワールドカップ(W杯)の優勝をもくろみ、全国から集められた高校生ストライカー300人。「ブルーロック(青い監獄)」は日本代表枠への生き残りをかけ死闘する高校生を描く漫画作品。原作者の金城宗幸さんは大阪府出身の県系3世だ。祖父母は今帰仁村出身で沖縄戦を体験し、大阪からブラジルへも勇躍し型破りな生き方を実践した。そんな生き方が受け継がれ、漫画創作の下地にはあるようだ。
「好きなことを自由にやったらいい」。祖父母の生き方を受け継いだのか。父母も大様に構え、子育てをした。4人きょうだいは、その考えを反映して「姉が芝居を、弟はバンドをやって、僕は漫画。妹は上の3人を見ていたのか、賢く就職した。親父の影響は大きい」と言う。
生まれ育った大正区は考えるまでもなく当たり前に沖縄があった。「エイサー祭りもあるし三線も習って、きょうだいも沖縄民謡をやって、日常だから、そんなに沖縄を意識したことはなかった」
大阪の自宅には父の収集した沖縄関係資料が集積されていた。「父は高校教師で社会科、人権教育をしていた。アイデンティティーの話はよくしていた」。自らのルーツをさかのぼり「自分とは、あなたとは、人生とは何だと話し、言われるまでもなく普通に考えるようになった」と話す。
「ブルーロック」は最もアツく、最もイカれたサッカー漫画と評される。選手の奇抜な選抜過程はデスゲームの様相。中でも登場するキャラクターのエゴまるだしの個性は際立つ。「漫画を書くときも、キャラクターをつくるときも、こいつって、どういう考え方なんだろう、どういうルーツなんだろうと、考えるのは得意だった」と語る。
振り返れば「父が沖縄との関係を考える姿を傍で見てて大変そうやなあというのと、おおすごいという両面を後ろで見てきた気がする。安室奈美恵さんとかエンターテインメント界に沖縄の人が増えていくのを喜んでいましたね。へえーと見てました」と語る。
大阪出身の母も祖父母や父の影響を受けたのか。沖縄の歌が流れる宴会を毎月のように楽しんでいた。「沖縄ならではだなあ。知らんおっちゃんにも声掛けられて、僕はストレスでしたけど」
あらためて考えると無意識のうちに沖縄の心象風景はあったようだ。「祖父母、父母の下に育ったから、ものを考える土壌ができたと思う。いろんなものに触れる機会があり、興味を持つようになった。僕の生い立ちの中に沖縄というものがあって良かった。今後も重苦しくならず、フラットに付き合っていきたいと思う。たぶんどっかで沖縄についてしっかり考えなくちゃいけないターンもきそうだなという気もしている」。