終わらぬ戦後処理、進む「南西シフト」 安保3文書改定で沖縄の基地負担は新たな段階に


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防衛省

 沖縄戦の組織的な戦闘が終結したとされる1945年6月23日から78年となる「慰霊の日」を迎えた。県内には今なお生活を脅かす不発弾が残り、所有者不明土地は未解決、遺骨収集は難航する。戦後処理は終わっていない。「戦後」は歳月を重ねる一方、近年は政府による南西諸島の軍備強化や、沖縄を取り巻く国際情勢が厳しさを増し「新たな戦前」の危険性が指摘されている。

 防衛省・自衛隊はこれまで「南西諸島の陸自部隊の空白を埋める」ことを目的に、南西諸島で駐屯地を新設した。戦後78年を迎える中、沖縄周辺では緊張緩和に向けた外交的な取り組みは影を潜め、対中国を念頭に沖縄方面の防衛力を強化する「南西シフト」はさらに進む見通しだ。日米共同訓練の増加も見込まれ、人員や装備面で沖縄の基地負担は新たな段階に入る。

 駐屯地新設は、2016年の与那国駐屯地開設を皮切りに、今年3月には石垣市に陸上自衛隊石垣駐屯地が開設され、事業は一段落した。

 一方、政府が昨年末に閣議決定した安全保障関連3文書では那覇市に拠点を置く陸自第15旅団の師団化が明記された。与那国駐屯地には地対空ミサイル部隊、勝連分屯地には地対艦ミサイル部隊が配備される。

 沖縄が日本に復帰した1972年5月、県内の防衛施設面積は米軍専用施設が2万7892・5ヘクタール、自衛隊施設が166・1ヘクタールだった。最新の2022年には米軍専用施設が1万8452・5ヘクタールとなり、復帰時から3割以上減った。だが、自衛隊施設は783・1ヘクタールとなり、復帰時の4・7倍に拡大した。

 玉城デニー知事は9日、安保3文書で保有が明記された敵基地攻撃能力(反撃能力)を有するミサイルを県内に配備しないことや、自衛隊配備は米軍基地の整理縮小とあわせて考えることなどを盛り込んだ要請書を政府側に手渡した。

 過重な基地負担が戦後78年を経ても解消しない中、相手の発射基地をたたくような長射程ミサイルが配備されれば「かえって沖縄が攻撃対象になりかねない」(県関係者)との危機感がある。

 本年度は地域外交室を立ち上げるなど、防衛力によらない平和の維持、強化を模索する。 (知念征尚)