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先住民族問題と沖縄 沖縄人は「先住民」主張を<佐藤優のウチナー評論>


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佐藤優氏

 沖縄人(ウチナーンチュ)のアイデンティティーに東京都立大学の深山直子准教授(社会人類学)が興味深い問題提起を行っている。

 <―沖縄でも、いわゆるウチナーンチュは先住民族であるという主張が一部にありますが、一方で先住民と呼ばれることに反発する人たちもいます。

 「先住民の議論では、当事者が自分たちのことをどう考えるのか、ということが重要だと考えているので、沖縄の住民をどう位置づけるかは、大変難しい問題です。日本では『先住民』『先住民族』という言葉に、ある種の未開性や蔑称的なニュアンスを感じる人が少なからずいることも関係していると思います。私たち研究者が、きちんと伝えられていないという反省もあります」

 ―それはメディアの役割でもあります。

 「先住民問題は日本では我がこととして報道されにくいですね。国内の問題でも、地元紙は報じても、国家全体の話題として報じられることは少ない。しかし、先住民という概念は、国家との対比、あるいはマジョリティーとの対比の中で成立する概念です。本来は、局所的にとらえられるはずのない考えなのです」

 「つまり、先住民がこの国にいるといった瞬間、すべての国民が関係することのはずですが、そうはなっていません」>(16日「朝日新聞デジタル」)

 以前にもこのコラムで述べたが、筆者は4種類の沖縄人がいると考えている。

 第1は、日本人に完全に同化したと考えている沖縄人だ。もっともこの人たちが日本人であることを過剰に強調する背景には、日本社会のメンバーとして自分たちが完全には受け入れられていないという意識があるからだ。

 第2は、沖縄系日本人だ。自分のルーツは沖縄にあると考えるが、日常的には日本人であることに違和感を抱いていない人々だ。

 第3は、日本系沖縄人だ。日常的には沖縄系日本人と区別がつかないが、「沖縄人か日本人かどちらか一つを選択しろ」と迫られた場合、沖縄人を選択する人々だ。沖縄にとって死活的利益、名誉と尊厳に関わる問題(辺野古新基地建設や日本人機動隊員による「土人」発言など)があると沖縄のアイデンティティーが前面に出てくる。ちなみに筆者もその一人である。十数年前は、沖縄系日本人というアイデンティティーを持っていた人々が急速に日本系沖縄人へシフトしていると筆者は見ている。

 第4は自らを独立民族である琉球人と規定する人々だ。日本(あるいは日米)の植民地支配からの独立を考えている。

 第三者的に見れば、琉球人だけでなく、日本系沖縄人もウチナーンチュは沖縄の先住民族と考えている。沖縄人が先住民族であると主張したとき「ある種の未開性や蔑称的なニュアンスを感じる」のは、われわれ沖縄人ではなく、日本人だ。日本による沖縄に対する構造的差別(特に米軍専用施設の過重な負担)を解消するためにも、沖縄人が沖縄の先住民族である事実を堂々と主張することが重要と筆者は考える。

(作家・元外務省主任分析官)