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県内の酪農家数が2022年11月以降、46戸となり、1974年以来最少となっいる。えさ代の高騰や単価の低い県外産の生乳との競争激化などで、経営環境が厳しくなり、離農者が出てきているためだ。乳用牛に肉用の黒毛和牛の受精卵を移植し、生まれた子牛を競りに出すことで収入確保を模索したり、酪農をやめて繁殖農家に転身したりする農家もある。
県酪農農業協同組合(県酪)によると、同組合所属の酪農家は昨年11月に46戸となり、74年以降過去最少となった。ウクライナ危機による飼料価格の高騰などで生産コストが上昇し、赤字経営や後継者不足による離農や廃業が出ている。
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生乳生産量も減少している。22年度の生乳生産量は前年度比8・9%減の1万7518トンだった。酪農家の減少などで県産乳の生産量が落ち込む一方、単価の低い県外産のパック牛乳の流通量が県内の小売店などで増加しつつある。県産乳の主な出荷先の一つは学校給食向けだが、一部地域では県外産が使われるようになった。
県酪の神谷翔平組合長は「採算が合わない中で、県酪として少しでも価格を上げてほしいという気持ちでメーカーと交渉している」と説明する。一方で、県内の酪農家について「県外と比べ、若手が多いという強みもある。離農を防ぐことで持続的な酪農につなげたい」と語った。
飼料価格は高止まりが続いている。県内では輸送費が上乗せされることもあり、酪農家の経営への影響は大きい。糸満市で約40頭の乳牛を飼育する横井直彦さん(49)の牧場では、22年度のえさ代が前年度より650万円増加した。横井さんは「コスト増加は厳しいが、もっと規模を拡大していきたいという意欲もある」と力強く語った。
現在、酪農家が子牛販売によって副産物収入を高める目的で、搾乳のために産ませる子牛を肉用牛にする取り組みが増加している。
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肉用牛の受精卵を乳牛に移植することで、肉用牛の子牛を産ませることができる。受精卵移植によって生まれた子牛は、乳牛の子牛より高く取引されるため、酪農家にとって貴重な収入源になる。横井さんの牧場では20頭以上の乳牛が妊娠しているが、そのうち12頭が肉用牛の受精卵によるものだという。
コロナ禍で販売量が減ったことなどで赤字が膨らみ、離農した農家も。県獣医師会の工藤俊一会長は19年から酪農経営を始めたが、生乳の需要が低下したこともあり、一時1億4千万円の赤字に陥った。
昨年1月に搾乳をやめ、現在は繁殖農家へ業態移行を図っている。子を産んだ乳牛からは搾乳できるが、工藤会長は採算が合わないとして民間の酪農業者に売り渡しているという。工藤会長は「(加工品などを作る)6次産業化している酪農家はまだ生き残れるが、搾乳だけではとても厳しい。食料自給率を高めるためにも国策、国防として国が畜産業を支えることも重要なはずだ」と憂えた。
(福田修平、當山幸都)