コロナ拡大で「入院困難」→ 訪問看護での自宅療養ひろがる 沖縄


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 新型コロナウイルスの感染拡大により、重点医療機関などで入院受け入れが困難になる中、本来は入院対象となる患者を訪問看護事業所につなぎ、自宅療養で対応する動きが広がっている。重点医療機関の負担軽減にもなるが、利用者からは「慌ただしい病院より自宅の方が落ち着いて療養できる。こういう選択肢があることも知ってほしい」との声もある。

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 沖縄県の発表によると、2日時点で県全体の病院に1130人が入院中だ。重点医療機関の病床使用率は増加を続け、75・3%となった。

 重点医療機関だけでなく、地域の診療所でも入院先を探すのが難しくなりつつある。
 

医療費5分の1

 中頭病院の仲村尚司医師によると、同病院では6月15日から7月4日まで、救急搬送を含めた救急外来患者14人を訪問看護につなげ、そのうち10人は自宅で療養を終えた。ある訪問看護の事例では、入院に比べ医療費が5分の1に抑えられたという。

 5類移行以前は県対策本部が訪問看護などを調整していたが、現在は医師による調整が必要となる。仲村医師は「コロナ禍で経験値を高めた訪問看護を利用した方が患者や医療の負担が減ることもあるので、医師の皆さんは訪問看護につなぐことを積極的に検討してほしい」と呼び掛けた。
 

「友達のように」

 読谷村在住の女性(70)は訪問看護で回復した一人。6月初旬、感染後に下痢やおう吐を繰り返し、2度目の搬送時にはけいれんも起こしていた。入院受け入れが困難になり始めた時期に重なったため同病院が訪問看護につなげ、自宅療養となった。

 絶食状態が続き、体力が削られていた女性にとっておう吐は「胃が飛び出るような苦しさ」だったが、「慌ただしい病院では眠れなかったので自宅の方が落ち着けた」という。訪問看護の利用は初めてだったが、吐き気止め入りの点滴を施す看護師が「以前から友達だったかなというような雰囲気」で寄り添ってくれたこともあり、「私の経験では自宅療養で良かったと思う」と語る。
 

つながる安心感

 女性の看護にあたった訪問看護ステーションクラセル読谷の管理者、宮城和希さんによると、感染拡大が続く影響で毎日のように依頼が来るほか、コロナ以外で症状の重い患者に対応することも増えているという。そのため訪問件数を増やしたり、可能な限り本人や家族の希望に添うようにしたりしている。

 新たな流行で負担は増えつつあるが、患者を受け入れることで関係医療機関との連携も深まっている。なによりも「入院が困難な状況でも患者が医療につながることが大事。なにかあれば訪問看護が見てくれるという安心感を患者や家族に届けたい」と語った。