琉球人遺骨の返還問題、米国人類学会の報告書で言及へ 現地調査した学者ら「高い倫理規範が必要」


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沖縄での聴き取りを踏まえ、日本の倫理規範の低さを指摘した米国人類学会の「遺骨の倫理的取り扱いに関する委員会」の共同委員長を務めるマイケル・ブレーキ-教授(左から5人目)とサブリナ・アガルワル委員(同4人目)ら=10日、県庁記者クラブ

 先住民の遺骨返還運動が世界的に広がる中、米国人類学会の学者ら6人が9日、県庁記者クラブで会見し、日本でも世界の先行事例を参考に、遺骨を返還する対応や高い倫理規範に基づく研究の在り方が必要だとの認識を示した。2024年に同学会に提出する「遺骨の倫理的取り扱いに関する委員会」の最終報告書に、琉球人遺骨の返還問題についても盛り込む。同学会は人類学会としては世界最大で、報告書は学会の指針や、米国政府の法制化にも影響力を与えるという。

 委員会の2人が6月下旬から日本で現地調査を実施し、北海道や沖縄などでアイヌ民族や琉球民族から聴き取りを行った。沖縄では今帰仁村の百按司(むむじゃな)墓を訪れたほか、遺骨の返還を求める「ニライ・カナイぬ会」などから聴き取りを行った。

 会見で、委員会の共同委員長を務めるウィリアム・アンド・メアリー大学のマイケル・ブレイキー教授は、「北海道や沖縄で非常に多くの不満を聴いた」と振り返り、研究者が先住民に謝罪や遺骨の返還をしていないことについて、「日本の人類学者は非常に低い倫理規範で研究をしてきたのではないか」と批判した。

 米国カリフォルニア大学バークレー校・人類学部長のサブリナ・アガルワル委員も「日本政府や研究機関が先祖の遺骨や文化的遺産が返還されていない状況を作り出しているのは恥ずべきことだ」と指摘した。

 ニライ・カナイぬ会は「世界の人類学者は、遺骨返還の声を人権に基づいた主張として認識し、過去の不正義を正し、説明責任を負い、人間性を回復しようとしている」と声明を出し、百按司墓などから持ち出された琉球人遺骨返還を訴えた。

 ブレイキー教授によると、米国人類学会は会員約1万2千人を抱える。遺骨の倫理的取り扱いに関する委員会は、オーストラリアやセネガルなど世界各地で聴き取りをした上で、24年5月までに最終報告書を取りまとめる。
 (中村万里子)