「五輪で金」夢へと踏み出す 沖縄から三重へ、体操・棟田琳音が躍進 初の全日本種目別で跳馬8位入賞


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この記事を書いた人 琉球新報社

 6月10、11日に行われた体操の全日本種目別選手権で、女子の跳馬で棟田琳音(りのん)=神森小―三重・三滝中、相好体操クラブ=が8位に入った。世界選手権の代表ら国内トップ選手が集う全日本レベルの大会で、県勢の女子選手が入賞したのは初めてとみられる。「大きな試合にたくさん出て、オリンピックで金メダルを取る」という目標に向けて、親元を離れて三重県で生活しながら実力を磨いている。

全日本種目別選手権の女子跳馬で8位になった棟田琳音(本人提供)

 ■小6で九州制し、全国へ照準

 棟田が体操と出会ったのは5歳の時。二つ上の兄が剣道をしていて、練習について行った時に逆立ちをすると、それを見た剣道の指導者に「体操をやってみたら」と言われた。このことをきっかけに、地域のクラブで体操を学び始めたが、「最初はお母さんと離れるのが嫌で泣いていた」。跳び箱やマット運動から始めて、小学2年生の時から選手コースのあるケンケン体操クラブに入りさらに力をつけた。

 トランポリンも練習に取り入れ、空中で回転することが楽しみとなった。「休みの日も休みたくないぐらいだった」と競技の魅力に引き込まれた。

 実力もついてきて小学3年生で県大会、6年生で九州大会を制した。全国大会にも3度出場し、視線は全国の舞台を向くようになっていった。より上のレベルを目指し、北中城村出身で世界選手権出場経験もある安里圭亮(興南高―福岡大出)がいる三重県の相好体操クラブに所属するため、中学生になるタイミングで沖縄を離れた。

 クラブを運営する社長の家に下宿をしながら学業と練習を両立する。平日4時間、休日は9時間の練習漬けの日々を過ごす。沖縄に帰りたいと思うこともあったが、家族の応援もあり「目標をかなえて、恩返しがしたい」と前を向く。

 

 ■トップ選手と競い味わった興奮と悔しさ

 練習を重ね、さらに難易度の高い技もできるようになり、三重県の大会でも優勝するなど確かな成長を感じていた。そんな中で、コーチから全日本の種目別選手権出場を打診された。世界選手権代表入りを決めていた宮田笙子や渡部葉月らトップ選手も参加する大会。初めての大舞台だったが「お祭りみたいに盛り上がって、雰囲気を楽しめた」と予選を通過し、決勝へ進んだ。

全日本種目別選手権の女子跳馬の演技をする棟田琳音(相好体操クラブ提供)

 決勝は予選の疲れもあり体が思うように動かなかった。着地で尻もちをついてしまうなど12・616点と得点は伸びなかった。「しっかり立てていたらもっと上に行けたかな」と悔しさをにじませる。

 試技後に跳馬で優勝した宮田にグータッチをしてもらい、「チャンピオンとしてのオーラがあった」と興奮気味に話す。そして「目標のためにはいつかは勝たないといけない人」と負けん気も見せる。

 県体操協会の知念義雄会長によると、県勢の女子選手が全日本レベルの大会でトップ8に入るのは初めてという。小学生の時に棟田の演技を見た知念会長は「脚力の強さが目立っていた。今後はオールラウンドで強くなっていくように、みんなで応援したい」とエールを送る。

 ■離れても強い故郷への思い

 得意種目の跳馬で全日本選手権に出場し、夢への一歩を踏み出した。「まだまだ課題があることは分かった」としながらも、「あの景色は忘れられない」と感慨深そうに振り返る。来年は種目別だけでなく、個人総合での全日本出場を目指す。

 地元・沖縄を離れても故郷への思いは強い。「沖縄も体操も大好きなので、県外からでも沖縄の体操を盛り上げたい」と、言葉に力がこもる。

 大会で初めて優勝した小学3年の時に立てた「大きな試合にたくさん出て、オリンピックで金メダルを取る」という目標に向け、歩み続ける。世界の舞台で美しい音に乗り、演技を披露する日も遠くないかもしれない。
 (屋嘉部長将)