八重山病院「医療崩壊の一歩手前」 職員もコロナ罹患で診療維持が難しく 感染対策薄れる社会との「温度差」訴える


この記事を書いた人 琉球新報社
新型コロナ感染拡大で緊急性の低い手術や入院の制限などについて説明する和気亨病院長(左から2人目)と医師ら=11日、石垣市の県立八重山病院

 【石垣】県立八重山病院の和気亨病院長と医師らは11日、石垣市の同病院内で記者会見を開き、新型コロナウイルスの5類移行後の感染拡大により、医師や看護師らが感染して人手不足となり「医療崩壊の一歩手前だ」と窮状を訴えた。緊急性の低い手術や入院はすでに延期しているとして、市民に対し、診療制限せざるを得ない状況に理解を求めた。

 和気病院長らは患者の対応に追われる院内と、感染対策への意識が薄れている社会との「温度差」に、現場の看護師らは疲弊してぎりぎりの精神状態になっていると明かした。

 同病院はコロナ病床を15床準備していたが、それを上回る入院患者が発生し、一般病床を転用して対応している。現在22人が入院し、3人は重症だという。

 医師や看護師、事務員ら28人がコロナに感染して出勤できず、その他22人が濃厚接触者で出勤が不安定な状況に追い込まれている。

 救急科の竹島茂人部長は「コロナは重症化しないと誤った認識の人がいる。いまこの瞬間も患者が搬送されて来ている。医療が崩壊しかけている」と訴えた。

 立花祐毅医師は「本来なら入院できた患者ができなくなってきている。病院と住民の温度差を埋めたい」と述べた。與那覇博康副院長は「コロナは5類移行したがウイルスが弱ったわけではない。現場は2類相当の気持ちで対応している。現場が疲弊した状況で踏ん張っていることを市民に知ってほしい」と強調した。

 和気病院長は「コロナは終わっていない。職員も罹患し、医療は逼迫している」として、市民に手指消毒などの基本的な感染対策の徹底を求めた。
 (照屋大哲)