インスタグラムのフォロワー数370万人、ミニチュア写真家・田中達也さんの「沖縄新作」とは


この記事を書いた人 Avatar photo 仲井間 郁江
「MINIATURE LIFE(ミニチュア ライフ)展2」の見どころなどを語る田中達也さん=11日、那覇市おもろまちの県立博物館・美術館

 インスタグラムのフォロワー数が370万人に上るミニチュア写真家・見立て作家の田中達也さんの作品展「MINIATURE LIFE(ミニチュア ライフ)展2 田中達也 見立ての世界」(主催・沖縄美ら島財団、沖縄テレビ放送)が12日、那覇市の県立博物館・美術館で開幕した。

 

ブロッコリーを木に見立て、木陰でカメラを構える田中さんのフィギュア

 田中さんの作品は、ミニチュア人形と身近な日用品などを組み合わせ、新たな「物」や「景色」に見立てる自由な発想が持ち味だ。ネーミングも遊び心があふれている。会場には、12日午前7時にインスタグラムで初公開となった沖縄限定の新作をはじめ、実物約50点を含む約170点が展示されている。11日の内覧会の様子を紹介する。

よく見ると、スイカでサーフィン?=11日、那覇市おもろまちの県立博物館・美術館

 アイデアのストックはなんと1000

 田中さんの作品のコンセプトは、「自由な発想を楽しんでいた子どもの頃のように、視点を変えることで発見できる『見立て』の面白さ」だ。作品に登場するのは、ボタンやクリップ、靴下や茶わんなど、日々の暮らしで使う「物」たち。そこにミニチュア人形を配置することで、新たな世界観が広がる。

 このような作品を作るようになったきっかけはインスタグラムだという。趣味で集めていたミニチュア人形を被写体にするうちに、どうやったら共感を得られる作品を作れるかと考え、今の「見立て」という作風につながったという。

 毎日新たな作品をインスタグラムで発表している田中さん。アイデアができた時点ですぐにスマホでメモをし、アイデアのストックは1000ほどあるという。主にジオラマ用のミニチュア人形と日用品をモチーフに撮影し、日めくりカレンダーのように毎日ホームページやSNSで更新していることから、「ミニチュアカレンダー」と呼ぶようになったという。

回転寿司を街に見立てたスシシティー=11日、那覇市おもろまちの県立博物館・美術館

写真撮影OK 頭を回転させながら見てほしい

 沖縄での作品展開催は2019年に続いて2度目。今回は、「#Nature」「#Workers」「#Sports」など、8つのゾーンに分けて作品を展示している。会場内には、田中さんのアトリエを再現した場所や、作品名の由来を解説した映像なども紹介されている。

 会場内は、自由に写真撮影OKだ。田中さんは「腕を組んで難しく観察するより、見に来てくれた方もカメラを構えて、『自分だったらこんな作品名をつける』などと考えながら、頭を回転させながら見てほしい」「発想を一番のお土産に持って帰ってほしい」と話す。

カラフルなクリップをベンチに見立てた作品=11日、那覇市おもろまちの県立博物館・美術館

クスッと笑えるネーミング

 紙幣を使った作品の写真に写るのは、1万円札をテニスコートに見立て、スーツ姿にラケットを持って、ネット越しに向かい合うサラリーマンらしき人物2人。審判台に座っている人物もスーツ姿だ。

その作品名は、
「ここは私が払います」「そんないけません、私が払います」「いえいえ、やはりここは私が」「いえいえいえいえ、ここは私が」「いえいえいえいえい(以下略)」

 なんとも長くてその空気感が伝わるネーミングに、思わずクスッと笑いがこぼれる。

1万円札をテニスコートに見立てて繰り広げているのは・・・=11日、那覇市おもろまちの県立博物館・美術館

沖縄限定の新作

 田中さんは各地での作品展開催で、その土地の物をモチーフにした新作を発表している。2019年の沖縄開催の際には、「ゴーヤージャングルー」という作品を紹介した。マングローブに見立てたゴーヤーの間でカヌーを楽しんでいる涼しげな作品だ。

 沖縄での作品展開催後、世界的な新型コロナウイルスの流行が続いた。その中でも毎日作品を発表し続けた田中さん。コロナ禍でなかなか外出できない日々が続いても、「作品を通して、工夫次第で家の中も楽しめることも伝えられたのではないか。自分の視点さえ変えれば窮屈な思いはしないし、発想次第だ」と語る。

沖縄限定の新作 ぐらぐらとたぎる油鍋にサーターアンダギーを田中さんが見立てると=11日、那覇市おもろまちの県立博物館・美術館

 そして、今回の新作のモチーフは、サーターアンダギーだ。熱々の油鍋に浮かぶサーターアンダギーの上でミニチュア人形が踊り歌う。そしてネーミングは…。新作の実物は会場で鑑賞してほしい。

 田中さんの新作に込めた思いは動画で紹介している。

(座波幸代)